ユングは「曼荼羅」を発見し「相補性」として理論を調和させていく!

今回のキーワードは、河合隼雄さんの『<心理療法コレクションⅠ>ユング心理学入門』の最終第七章「自己」です。河合さんはこの章で「自己実現」について詳述しています。

自己実現は人生の究極の目的であると述べたが、これは一つの静止した到達点があり、それを自己実現と呼んでいるというものではない。前節において述べたことによって明らかであろうが、自己実現はつねに発展してやまぬ過程であり、その過程そのものに大きい人生の意義がある。実際、われわれは自分の自己(セルフ)そのものを知りつくすことはなく、自己の象徴的表現を通じて、その働きを意識化することができるのである。(260ページ)

自分のなかの劣等な部分と直面し、それを統合してゆこうとする努力が自己実現であるが、このような統合性が強調されるものとして、反対物の合一を示す男性と女性の結合の姿が、自己の象徴として生じるときがある。まさに陰と陽の統合である。(264ページ)

この章で、河合さんは、ユングが「曼荼羅(マンダラ)」を発見することで気づきを得、理論が統合(完成)されていく過程を語っています。

ユングは彼の患者たちが、その夢や幻想などにおいて、円や四角をテーマとする象徴的図形を見る、というよりは、患者の心の内部より自発的に生じてくることがあるのに気づいていた。そして、この出現の意義は患者自身にとっては不可解なことであったが、その際に深い平安の感じや、調和の感情が伴うこと、あるいは治癒の起点とさえ感じられることがあるのをユングは重要視していた。ところが、彼がチベットの文献を知るに及んで、東洋においては、この円と四を主題とする多くの図形が宗教的に大きい意味をもつものとして存在し、それがマンダラと呼ばれていることがわかり、この東と西の対応を非常に興味深く感じるのである。(265ページ)

さて、このようなマンダラは、ある個人が心的な分離や不統合を経験している際に、それを統合しようとする心の内部の働きの表れとして生じる場合が多いとユングはいっている。「これは明らかに、自然の側からの自己治癒(self-healing)の企てであり、それは意識的な反省からではなく、本能的な動きから生じてきたものである。」(266ページ)

数回にわたって、河合さんの言葉を通してユング心理学を考察してみました。ユングの寄って立つ基盤は何か… と考えていくと、一つの言葉が浮かび上がってきます。それは「相補性」です。「お互いに補い合っている」ということです。

ユングの宗教性は、1875年に、スイスのボーデン湖畔にあるプロテスタントの牧師の家に生まれたことで、育まれていくのですが、感受性の強い少年ユングは、牧師である父親の信仰に対して、それが「真の信仰心」なのか、疑いの目を向けるようになります。善と悪を対置させる一神教であるキリスト教の洗礼を受けながらも、ユングは最終的に東洋のマンダラにたどり着き、善と悪の二元論ではない、「善でも悪でもない」、言い換えると「善でもあり悪でもある」世界観を自身の中で統合させていくのですね。

今回の最後に、『約束された場所で(文春文庫)』の中にある、村上春樹さんが河合隼雄さんに、「悪」について訊ね、それに河合さんが答えたシーンを引用することにします。

村上 : …たとえば麻原彰晃を見ていても、少年Aを見ていても、純粋な悪というか、悪の腫瘍みたいなものがわっと結集して出てくる場合があるような気がしています。そういうものが体内にあって、「悪の照射」とでも言うべきものを起こすんじゃないかと。そういう印象を強く持ちました。うまく説明できないんですが。

河合 : それはやはり、我々の社会がそういうものを見ないように、見ないですますようにしすぎるからだと僕は思います。そうなるとどうしても、固まったものがばんっと出てきます。たとえばね、少年A事件が起こったときに、子供たちが陰に隠れて悪いことをしたらいかんからということで、そのへんの樹木を全部切ってしまったんです。僕はそれを聞いてものすごく腹が立ちました。話はまるっきり逆なんですよ。子供たちは大人の見ていないところで、子供なりに悪いことをして成長するんです。いつもいつも大人から見られているから、あんなことが起こってしまうわけですよ。ほんまに腹が立つ。僕は木が好きやからね、木を切るというだけで腹がたつんやけど(笑)


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