超有名人を父親に持つ娘が「臨終から葬儀までの顛末」を語ります

父がいよいよ今夜辺りがヤマだと聞かされた夜も、私は自転車で深夜の猫エサに出ていた。この件は以前にも書いた通りだ。(中略)
それに私は〆切をかかえていた。単純作業に入ってからの〆切ならともかく、最も頭と集中力を必要とする、イラストエッセイのネーム部分だった。これだけは明日までに仕上げなければならない。クールダウンも兼ねて1周約20分、日課の“猫巡回”に出発した。

「戦後思想界の巨人」とリスペクトされる吉本隆明さんの長女で、漫画家のハルノ宵子さん執筆の『隆明だもの』に収録されているエッセイの一つ「片棒」のなかの一節を引用しています。

前回は「銀河飛行船の夜」を取り上げ、吉本隆明さんの妻である和子さん(ハルノさんの母親)の臨終のシーンを紹介しています。「銀河飛行船の夜」は、この「片棒」の次に掲載されていますから、『隆明だもの』とのタイトルが冠されている父親の臨終を、ハルノさんが、どのように捉えているか「紹介しないわけにはいかない!」と思い直し、今回取り上げることにしました。

ただ、ハルノさんも「この件は以前にも書いたとおりだ」と語っています。つまり、「じゃあな!」(そのエッセイのタイトル)だけでは物足りない思いが高じ、第2弾というか、「詳細ストーリー」として、この「片棒」が書かれたことが伝わってきます。

猫巡回から帰ると、キッチンのテーブルに置きっぱなしにした携帯に、山盛りの着信が入っています。病院からと、終電ギリギリまで父に付いてくれていた共同通信のI氏からでした。

病院はタクシーで5分足らずだが、到着すると「あちゃ~! 逝っちまっているよ」というのも、以前書いた通りだ。「やるなぁ! 親父お見事なタイミングじゃないか」誰もいないスキを見計らったとしか思えない。私もこうありたいものだ。

ここからの数時間、“観察と記述の鬼”であるハルノさんの健筆が踊ります。「戦後思想界の巨人の死」であり、マスコミによって広く公開されたわけですが、そのタイミングについて、共同通信のI氏とのやりとりも一興です(失礼…臨終を“一興”と言ってはいけませんね)。

I氏は父の死を朝7時のニュースで一斉配信するという。今は自分の〆切しか頭にない薄情娘の私は、「何とか昼まで時間を稼げないか?」と交渉したが、こればっかりは隠し通せた著名人は少ないと言う。確かに病院サイドからだって拡散しちゃうよね。じゃなきゃあんなに即座に銀行が預金凍結する訳ないもんね。「よっしゃ! それで了解した」7時には世間にバレるという前提で動くしかない。

歌舞伎の大向うではありませんが、思わず「江戸っ子だねえ~」と、声を掛けたくなりますね(笑)。

申し訳ないが私は“魂”が抜けた肉体は、“ブツ”だという考えだ。そのブツを一刻も早く駆けつけて一目拝もうと、あたかもそれが誠意であり忠義であるかのように思っている“ガキの使い”のようなオジサンたちが押し寄せてくる。「私の〆切はどうなるんだよ~!」イヤ…そのお気持ちだけは、ありがたく頂戴しておくが。

そう考えながら、ハルノさんはマルチなタスクをすごい勢いで処理していきます。

父の病室に戻ると、すでに霊安室に移されたという。霊安室の父のかたわらには、H君がポツネンと座っていた。「へぇ~霊安室ってこんなんなってたのね」と感慨にふける間もなく、搬送車が到着したという。

当該エッセイの「片棒」は7ページの文量ですが、「片棒」の意味するところは最後に登場します。ハルノさんの“気っ風のいい”語りを次回も綴ってみようと思います。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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