二つの目を組合わせることで状況が立体的に把握できるようになる

河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の47番目のタイトルは、「2つの目で見ると奥行きがわかる」です。

動物に「二つの目」が備わっているのは、神様の配剤かもしれません。生理学的にも意味をもっています。河合さんは、そのことを当該エッセイの冒頭で、「科学的に」説明しています。

人間は目を二つ持っている。このため遠近の判断がつき、景色を見ても、奥行きがわかるのである。片方だけの目で見ても、ある程度わかるものの、たとえば針に糸を通したりするときなど、なかなか難しいものである。

河合さんは2ページにわたって、「学校はよく休む、暴力はふるう、飲酒喫煙はする、異性関係も荒れている」男子学生にほとほと困ってしまった高校側が、この男子生徒を退学にしようと思うのですが、親が熱心に頼むため、カウンセラーのところに送られてきた事例を取り上げます。
カウンセラーは、この高校生の話にひたすら耳を傾けます。そうこうするうちに6回目くらいになると、もうカウンセラーの助けを借りなくても自分の力でやっていけそうだという話も出てきて、カウンセラーは非常に喜び、そろそろ終結にしようなどと考えます。そのとき高校の教師から連絡がくるのです。

少年の素行が以後も悪くなるばかりだし、親もあきらめたような状態だし、本人も退学を希望しているので、退学させることにしたとのことであった。これにはカウンセラーはまったく驚いてしまった。いったいどうなっているのやら、わけがわからないのである。
このようなことは初歩的なカウンセラーに時に生じることがある。カウンセラーでなくとも教師でもこのような体験をした人もあるだろう。こんなときに、子どもにだまされたと怒る人があるが、それは間違っている。

この事例は、カウンセリングであり、教育の場で生じた内容なので、コーチングのテーマとして直接結びつけるのは、妥当とはいえないかもしれません。ただし、コーチングセッションにおいて、クライアントの「言葉」は「行動」を伴ったものなのか、コーチの「期待する態度」に、とりあえず「応えておこう」ということではないのか…そのような自問自答を促す内容として受けとめることができそうです。

端的に言ってしまえば、カウンセラーはこの高校生を「一つの目」だけで見ていたのである。彼は「甘い目」で少年を見て、そのよい面だけを見ていたのだ。この高校生が心を入れかえて頑張ると言ったとき、それは嘘ではないのだ。しかし、頑張ろうと言いながら遊びたくもなるし、少し頑張っても後は荒れて来ることもある。これに対して、カウンセラーが「一つの目」だけで見ていると、高校生が「頑張る」と言いつつ言い淀んだり、調子のよいことばかり言いながも、動作が落ち着かなかったりしても、そんなのは見えないのである。

コーチングも「言葉」のやりとりですから、クライアントの「言葉」を受容します。その上で、クライアントの「言葉」以外の、ノンバーバルな態度にも五感を総動員して、感じていくのです。
ユング派心理学者である河合さんは、この「五感での受容の方法」について、ユングが「言語連想検査」によって合理的に把握する方法を編み出したことを、学術書で紹介しています。

河合さんはエッセイの最後で、この「二つの目」をさまざまな視点に拡大していきます。臨床心理学者の泰斗である「河合さんの目」を感じることが出来ますね。

ここに二つの目として、甘い目と厳しい目という例をあげたが、問題によっては、いろいろな目の組合わせを考えるとよいのではなかろうか。男の目と女の目などという組合わせも考えられるだろう。天上からの目と地底からの目の組合わせを考えてみるのもいいかもしれない。あるいは、主観と客観の対立を考える人もあるだろう。いずれにしろ、そのときの状況に応じて必要と感じられる、二つの目の組合わせにより、状況を立体的に把握しようとすることが大切である。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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