ちゃんと必要な時に壊せる人が“本当の”プロだけど…

(河合)
博士もルート君もいいけど、家政婦さんがまた面白かったですね。あの家政婦さんも、下手したら博士との恋愛関係になるでしょう。それがそうならない。
(小川)
はい。そこが彼女の利発なところです。それに、家政婦という仕事が大事だったということもあると思うんです。
(河合)
そうそう。とりわけ家政婦さんというのは、ちゃんと一定の距離を保てないとできない職業なんですね。ところが、面白いのは、ちゃんと壊しているんですね、大事な時に。
(小川)
ええ、それを、必要あらばという時にはね。
(河合)
ちゃんと必要な時に壊せる人というのが本当のプロなんです。けど、家政婦紹介組合の組合長に怒られて、彼女、行けなくなるでしょう。あの場面も本当に大事なところです。魂だけで生きようとする人は挫折するんです。やっぱりこの世の中というのはね、何か難しいんですよ。

この『生きるとは、自分の物語をつくること』は、河合さん、そして執筆者の小川さんが、同書の販売促進を目的に語った本ではないので、二人の「共感の深さ」がわかりにくいところがあります(細かくストーリーを説明していませんから)。この箇所は、『博士の愛した数式』の中にある、「家政婦紹介組合」で定められているルールを、家政婦の“私”が破ってしまうシーンなのですね。

ここまで読み進めた読者は、小説家である小川さんが創ったキャラクターの“私”に、ほとんど「同期」してしまっている(と想像される)ので、「怒る」組合長に対して、「なぜ、“私”の気持ちを理解してあげられないのか」、「ルールを逸脱していることを、“私”はちゃんと理解している。それでも、已むに已まれず行動したわけだから、大目に見てあげることこそ、“本当の”責任者だろう…」と、読者に感じさせるよう、小川さんは「小説家の技巧」を凝らしています。この“私”の失敗が、彼女の成長につながったことを小川さんは描いていますから。
河合さんはちゃんと見抜いていて、「魂」だけで生きようとする人は挫折し、「情」にとらわれすぎると「世間」に適応することに困難が生じる、と言語化してくれました。

(小川)
本人は苦しみますね。彼女は解雇されて、でも派遣された別のところでも冷蔵庫の製造番号が素数だなんて思ったりする。
(河合)
数で、博士とつながろうとする。
(小川)
数字の永遠性に人間の有限さが支えられるところです。

小川さんは、“私”をシングルマザーとして造型しました。10歳の息子であるルート君をどのように育て、どのように関係性を築いてきたのか…、読者に深く考えさせる「リアルなシーン」をさまざま設定しています。そして、80分しか記憶が持たない「博士」とルート君の間に「友情」が生まれていくのですが、「物語」は、“私”を含めた3人の間に強い「絆」が形成されていくプロセスを描きます。でも、その強まる「絆」も、80分しか持たない…

(河合)
それと子供ですね。ルート君。魂の世界でつなげてゆくのは子どもなんです。子供というのは本当にすごいものなんです。
(小川)
子供が何かの仲立ちをするということは多いですね。
(河合)
まさにルートになる。……

この後河合さんは、「箱庭療法」についてしばらく語ります。それを受けて小川さんが…

(小川)
博士にとっては数と戯れるということが箱庭を作っているみたいなものなんでしょうね。
(河合)
同じですね。そこへその世界が分かる人たちが来たんですよ。分かるというときに大事なのは、頭で分かるというんじゃなくて、感得できる。カウンセラーは感心する才能がないとダメだとよく言います。感激する才能がないと絶対できない。

「その世界が分かる人」は、“私”でありルート君です。「三人の関係性はコーチングによって支えられている…」と、筆者の感受性は捉えています。

4話目の見出しは「子どもの力」です。この最後の対話に、マイヤー先生が登場しました。以前に解説した、「尊敬する“雲の上の先生”と“対等である友人”の関係とは?」にも目を通していただき、お二人の対話を感得していただければ、と思います。

(小川)
先生ご自身もユング研究所に留学されたとき、すごくいい先生にお会いになったんですよね。
(河合)
ああ、マイヤーさん。あの先生が何もしない典型やった。あくびばっかりしているんですよ。だけど色々なことをちゃんと聴いている。
(小川)
でも先生が、「スイスでは本当の友人はできなかった」と言われたとき、そのマイヤー先生が、「じゃあ今日から私が友人になろう」と言われたんですよね。
(河合)
あれには感激しましたよ。年齢も、立場も、国境も超えて、「今日から友人だ」ですからね。僕もちょっとルート君みたいな気持ちやった(笑)。


コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。

This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.

認定コーチ紹介サービス
ホームページ制作サービス
Certified Coach Referral Service
Web Site Creation Service