鎧を脱ぎ捨てることができると、「途端に楽になった」

ルートは私が作り上げた登場人物ではありせん。私はただ、自分が書こうとしている物語の前にひざまずき、ルートという言葉をその器の中に解き放っただけです。作者の手の届かない場所でこそ、登場人物たちは成長できるのかもしれません。

生きるとは、物語をつくること』の「二人のルート~少し長すぎるあとがき」を読み込みつつ、コーチングを語っています。
二十代で「職業としての小説家(この表現は、村上春樹さんが好んで使っています)」となった(なってしまった)小川洋子さんが、「あとがき」を書いている“現在”に至るまで、どのような心(たましい)の変遷をたどって来たのか… “珍しく”自己開示されていることが伝わってきます。

小説家が書く「物語」を読み、その登場人物(おもに主人公)を、その小説家と被らせてしまうことを、多くの読者は体験します。もちろん「私小説(的も含めて)」も存在しますから、そのような読み方が、間違いとは言えない場合もあります。ただし、小川さんの書く「物語」を、そのように読んでしまうと、「それはちょっと違う」と思うのですね。

その小川さんは河合さんの著作に触れ、そして、実際に言葉を交わす「対話(鋭敏な感覚を持つ小説家ですから五感も起動させながら)」によって、フィクションを身に纏っている小川さん(小説家なので)が、思わず「その鎧を脱ぎ捨ててしまった」のが、この「二人のルート~少し長すぎるあとがき」です。
鎧はとても重い! それを脱ぎ捨てることが出来た小川さんは「途端に楽になった」のです。よかった…(笑)

小川さんは、どこからか湧き出てくる言葉、文字をつかまえて、小説にしてきました。ただ、その小説である「物語」を自分はなぜ書いているのか… その意味がつかめていなかった。本が売れ、評価されているにもかかわらず、自分の心は「混沌」としており、落ち着きどころが見出せない。「幸せ」になれない…

それが「あとがき」を書いている“その時”、小川さんは「幸せ」に包まれています。河合さんという“真の”コーチによって「小川さんに幸せがもたらされた」、と解釈させていただくことにします。
冒頭の引用の“前のパラグラフ”を引用し、今回の「コーチング解説」を終えることにしましょう。

何の考えもなく付けた名前が、作者の手を飛び立ち、物語の中で自由自在に動き回っている。作者には内緒でこっそり小さな秘密を仕掛けてゆく。読者の誰かがその秘密に気づく。作者を置いてきぼりにして、ルートとその読者だけがそっと目配せを交わし合う。このイメージは私を幸せな気分にしてくれます。自分を絶対的な創造主ではなく、物語に対して奉仕する者だと認めた方がずっと安堵できます。どんなにあがいても、作者の頭から搾り出されるものより、物語の持つ器の方が大きいのです。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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