(小川)
先生は昔話ばなしやおとぎ話を研究されておられますよね。
(河合)
そうです。それらのお話はみんな、ホラだけどある意味本当なんですね。
(小川)
真理ですね。昔々あるところにあったという。
(河合)
白雪姫も、山姥も、ヤマタノオロチもいますね。
(小川)
あ、そうだ。先生、ウソツキクラブの会長さんなんですよね。是非、私も会員に加えてください。
(河合)
はいはい。年会費800万円ですよ。
(小川)
800万円!
(河合)
ええ。それに、総会もありますよ。年に1回、4月1日。皆に通知が行くんです。4月1日に集まって、1人1分ずつウソをつく。一番すごいウソにはウン万円の賞金が出るとね。
小川洋子さんと河合隼雄さんの対談である『生きるとは、自分の物語をつくること』の第Ⅰ部は「魂のあるところ」です。その5番目の見出しが「ホラ話の効能」で、これが終わると、本のタイトルをそのままを冠した、第Ⅱ部の「生きるとは、自分の物語をつくること」に移行します。つまり第Ⅰ部は、本題に入る前の「アイスブレイク」といった趣の対話です。〆の「ホラ話の効能」は、年季の入った河合さんの「ウソ」がさく裂する笑いの絶えないセッションとなりました(笑)
河合さんが会長の「ウソツキクラブ」とは……
(河合)
けどね、これは面白いと思って本当に行くと、こんなん信用するなんて、ウソツキクラブの会員たる資格がないと言うて除名されるんです。だから、僕はまだいっぺんも総会に出たことないです(笑)。年会費も、うそ八百ですから。
(小川)
あははは。八百というのも面白いですね。なぜ八百という言い回しになるのでしょう。
この後、8にまつわる「数の話」が河合さんの口から、次々飛び出します。
- 8は日本語で多いことを表す…2の2の2という倍倍倍だから
- 八百万(やおろず)
- 八百屋さん
さらに「素数」の解説に広がります。
・素数の7だと、七不思議……
対話の流れは止まっていないと思うので、このようなネタがポンポン飛び出す「河合さんの博覧強記ぶり」に圧倒されますね。
小川さんが、「ウソツキクラブの会長さんはラクそうですけど、やっぱり文化庁長官の方はまた大変なお仕事ですね」と質問すると…
(河合)
いえいえ。僕が最近作ったジョークがありましてね。部下を連れて外出して、戻ってきた時、みんな身分証明書を忘れてるんです。で、入り口で守衛さんに止められるんですね。「証明書がない人は入れません」と言われて、「いや、我々はここで働いている」「何やってるの?」「私は天然記念物の……」「入ってよろしい。あなたは?」「私は伝統芸能の……」「ああ、どうぞ」言うて順番に入る。で、僕の番で「私、何もしてないんですが……」と言うたらね、「あ、それは長官ですね。失礼しました。どうぞ入ってください」となるわけ(笑)。
(小川)
ははは、いいですね。でも、そのくらいの心の余裕があるかたが中心にいてくださらないと文化は発展しないと思います。
最後の最後まで、冗談だらけのセッションです。筆者は、コーチングのアイスブレイクと結びつけてしまいましたが、私たち“真面目な”コーチは、「ときには、思いっきり羽目を外してみるのも大事なことだ」と、“真面目に”考えてしまいそうですね(笑)
河合さんは、カウンセリングの臨床ほど「過酷な現場」は存在しないと言います。私たちプロコーチも「人に関する専門家」です。だからこそ、どのような環境にあっても、常に「心の余裕」を忘れない… 改めて肝に銘じたいと感じるところです。
(河合)
まあ、長官元気で留守がいい、ですかね。でもね、ダジャレはね、文化庁では今や無形文化財になったんです。
(小川)
あ、認定されましたか(笑)。
(河合)
ええ、荒唐無稽文化財ね。僕、オイラーの公式とかもうすっかり忘れてましたけど、今度、ダジャレを集めて、おいらの公式をつくろうと思ってますから。
(小川)
楽しみにしています(笑)。ありがとうございました。
(2005年12月15日、文化庁長官室にて)
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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