ルートさんはジャクリーヌさんのそばに静かに控えていました。インタビューにじっと耳を傾け、うなずいたり、遠くを見つめたりしながら、奥さんが言葉に詰まるとすぐさま助け舟を出します。京都で買った生八つ橋がお気に入りで、インタビューの途中、お土産用の一箱をわざわざ私のために開けてすすめて下さったりもしました。決して出しゃばらず、周囲の人たちに神経を配る紳士です。ただ、時折見せる笑顔がとても人懐っこく、チャーミングで、今でも忘れられません。とにかく、どんな賛辞を浴びようとも、それは本来自分たちではなくアンネ・フランクが受け取るべきものである、と十分にわきまえているご夫婦だったのです。
「CBLコーチング情報局のコーチング大百科」は、一話完結を旨としています。ただし今回は、前々回の「小川洋子さんは、1943年に撮影されたルート少年と遭遇します!」の続編とさせていただこうと思います。
人は、興味が喚起されるとその対象を観察します。それは、景色であったり、動物であったり、そして人であったりします。対象はその場に存在していなくても、心の中で映像が浮かんでくることもあるでしょう。それが「感動」を伴うものであれば、人は「文字」として刻もうと考えます。このプロセスは、小説家も同じだと思うのですね。
小川さんの小説を読んでいて、いつも感じることなのですが、小川さんが「文字」を綴る世界には、いつのまにか映像が顕れ、音や匂いや、風を伴う空気の動きなどが感じられます。小川さんの類まれな「描写力」です。この「二人のルート~少し長すぎるあとがき」でも、感じることが出来ます。
ジャクリーヌさんの夫として来日されたルートさんは、高齢ですが、ジャクリーヌさんが書かれた本には、1943年に撮影されたルートさん(少年のルート君)の写真も掲載されていました。小川さんは、そのルート君に引き込まれます。小川さんに「物語」が降りてきました。
自分を守ってくれる大人たちの精神が、神への信頼によって支えられている、と感じ取れる少年、自分の鼻の形を心配している少年、タイヤのない自転車の荷台に乗って“叔父さん”の背中にしがみついている少年が、博士とキャッチボールをしたとしても、何の不思議もないではないかと思うのです。この想像の中でもやはりルートは、小説と同じく、博士が取りやすいボールを投げ、博士のどんなボールもちゃんとキャッチすることができます。隠れ家のユダヤ人少年と、江夏の野球カードを首からぶら下げた、素数を愛する博士の間を、一つの丸いボールが行き来します。
『博士の愛した数式』で、大人になったルート君と博士が、キャッチボールをするシーンを小川さんは想起し、ジャクリーヌさんの夫であるルート君を、まぶしく眺めています。282ページで綴られる『博士の愛した数式』の279ページのところを引用させていただき、今回の「コーチング解説」を終えることにします。
一方ルートも、博士にもらったグローブを必ず持参した。博士とのキャッチボールは不恰好なお遊戯みたいなものだったが、二人は大いにそれを楽しんだ。ルートは彼が最も捕りやすい所へボールを投げ、どんなにとんでもない返球でもキャッチすることができた。私と未亡人は並んで芝生に腰をおろし、ナイスプレーに拍手を送った。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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