ロジャーズの「自己一致」を河合隼雄さんはどう解釈するのか?

「コーチングの人間観にもっともフィットする臨床心理学者は誰ですか?」と、カウンセリングとコーチング(特にエグゼクティブコーチング)の資格を取得している人に訊いてみたいと常々考えています。さて、その答えは…

CBLコーチング情報局のスタンスとしては、一つではない(一人ではない)と、即答します。世界的にオーソライズされた臨床心理学者のことを深く学び、共感することができれば、その人は他の心理学者についても理解し受容できるはずです。ましてやコーチングは、カウンセラーが対応していくクライアント(精神的な病を抱えている人…ある程度限定された範囲の人たち)と異なり、幅広い層と対話していく関係性です。
したがって、専門分野をもちながらもリベラルアーツとしての視点を忘れることなく、さまざまな分野に興味関心を持ち続ける人が、エグゼクティブコーチとして要件だと言えます。

さて、ここまでは前置きですが、そのことを踏まえた上で、今回のキーワード解説は、カール・ロジャーズの3原則の一つ、「自己一致」を取り上げます。
CBLコーチング情報局は、ロジャーズを「コーチングの母」として捉えます。「自己一致」についても、これまでさまざまに切り口で解説しています。そこで今回は、『<心理療法コレクションⅡ>カウンセリングの実際』で、ユング派心理学者の河合隼雄さんも紙幅を割いて語っていますので、紹介することにしましょう。

カウンセラーの基本的態度としてロジャーズは無条件的積極的関心(unconditional positive regard)、それから、クライアントの言っていることに対して共感的に理解する、しかも、その場合カウンセラーの態度はgenuineでなければならないといっています。このgenuineを純粋と訳したために混乱が起こっているのではないかと思いますが、純粋とか、自己一致とか訳されます。(115ページ)

genuineを使っていたロジャーズも、しっくりこなかったようで、今日ではgenuineよりも日本語訳の自己一致にフィットするcongruenceが一般化していることを補足しておきます。河合さんは、「純粋」と訳されたことの影響を次のように語ります。

よく言い合いをしている人がいます。「あいつはgenuineではなかった」などと言って  非難する。しかも、カウンセリング場面ならともかく、社交的なつき合いで、「おまえ、遊びに行こうか」と言ったら、「うん、行こう」と言った。ところが、後で聞くと行きたくなかったと分かる。そうすると「あいつはgenuineじゃない」と言ったりしますが、社交的なつき合いで、genuineでやる人はおそらくなかろうと私は思います。社交的なつき合いというのは、けっこうgenuineでないほうがすばらしいことが、多いのでして、ここで考えてほしいのはgenuineであることがそれほどすばらしいことが多いのであれば、なぜクライアントに、時間と場所を制限して会わねばならないのかということです。(124ページ)

私たちが「社交」として、普段会話している状況を河合さんは見事に切り取ってくれますね。河合さんはその「社交」と、プロであるカウンセラーが対応する「カウンセリング」との違いを、この後説明していくのですが、それは「私が今日の5時からクライアントに会うのはつらい、疲れているからやめたいと思っている。するとクライアントが来たとき<今日はあなたに会いたくない>というのが純粋だという人があります」という例話についての語りです。

会いたくない気持ちと、会わねばならない気持ちの両方がある。前に述べました二律背反を思い出してほしいのですが、その相反するふたつのものが高まって、ふたつの音がそのまま一つのハーモニーにとけこんでいるというような態度ができればgenuineだと思います。非常にむずかしいことだと思います。(125ページ)

河合さんは詩的な表現で葛藤する状況の統合してくれました。この状況はコーチングにおいてもたびたび起こるでしょう。次回もこのテーマについて紐解いてみます。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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