『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』の82ページから始まる「元型としての老若男女」のなかで河合隼雄さんは、子どもが親に暴力をふるう「悲劇」がなぜ起こってしまうのか? その考察を「宗教の世界が縮小され、日常の世界が肥大化した」という視点で進めます。つまり、神々という超自然的な力を畏怖し、尊宗する態度を「迷信」として取り除いていった「近現代の実相」が招いているという分析です。
人間の無意識内のイメージに注目すると、そこには、すべて受け容れ抱きしめてくれる、慈母観音の像や、子どもを取って食べてしまう恐母としての鬼子母の像が存在していることが解る。これらの像を現実の人間に投影するとき、先に示したような悲劇が生じるのだが、古来から人間は、それらの像を神々の像として外在化し、それに対する畏怖の感情や、尊宗の態度を宗教的な儀礼によって示すことにより、それらの像に日常生活において直面することを避けていたのである。
無意識内に存在する凄まじく超人的なはたらきは、神々のこととして奉り、日常の生活にそれが侵入してくるのを防いでいたので、人間は家族たちのつき合いを、人間レベルで行うことが出来たのである。
宗教はこのような大きい意義をもっていたが、人間の日常世界における自由を多くのタブーによって拘束したり、儀式に使用する時間やエネルギーは日常的な行動を圧迫するものである。そこで、近代になると、宗教の世界は縮小され、日常の世界が肥大化してきたのである。
西洋に生まれた自然科学は、論理実証主義の精神に基づいて、宗教に伴う「迷信」を取り除いていったのであるが、「角をためて牛を殺す」たとえそのまま、既に述べたような、家族に対する宗教的な「守り」をも破壊してしまうことになった。そのため、昔は神々のこととして行われた、家族間の殺人や近親相姦が、人間のこととして行われねばならなくなったのである。(88ページ)
CBLコーチング情報局はコーチングを語ります。臨床心理学者である河合さんの「言葉」を取り上げるのはそのためであり、「河合さんの書そのもの」を紹介することではありません。ですから、一つの引用が長くならないよう心がけています。
ところが上記の箇所に触れたとき、「宗教とは?」「儀礼とは?」という漠とした概念が、すっと肚の中に収まってきた感覚が新鮮だったこともあり、長い引用となったことをお断りしておきます。
河合さんは、宗教を「メタ認知」で俯瞰しています。信徒の語り、そして宗教学者とも異なる捉え方です。宗教は、「人間が人間らしく振る舞えるよう」防衛機制の役割を果たしてくれていた、とも解釈できる視点です。
コーチングはクライアントを受容し共感します。ただしプロコーチは人間関係における専門家であり、“普通の人”が思い描く「受容・共感」とは、別の次元としての「意味」を見出し、体感していきます。「メタ認知」が求められるのです。
河合さんの筆は進みます。河合さんの思想が伝わる内容をもう一つ引用して今回のキーワード解説を終えることにしましょう。
これも人類の「進歩」の一環として生じたことであろう。実際、冗談としてではなく、人間は神々の生活に近づきつつあるのかもしれない。このことを言いかえると、人間がその内包する意味を明確に知ることなく行為してきた神々に対する多くの儀式を廃すると共に、その儀式のもつ意味を明確に意識化することを必要とし、また可能とする時代が訪れてきた、ということができる。
この意識化の努力を怠り、単に神々の存在を否定したり、儀式を廃するときは、人間は家庭内で、人間のレベルを超えた憎しみや怒りを体験しなくてはならないのである。これは、言ってみれば、科学によって否定されようとした神々の反撃としても理解することができるであろう。(89ページ)
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.