スクールカウンセラーではない「友人」によって不登校を克服したが…

河合隼雄さんの『大人の友情』の大きな4番目のテーマである「友人の出世を喜べるか」の2話目は「友が憂いに我は泣く」です。
前半で、「『源氏物語』には友情についてのいろいろなエピソードがある」と触れ、都落ちし、明石に身を引いている光源氏を頭中将が訪ねていくところを紹介します。紫式部の描く「男同士の友情」は、「巧」ですね。感激した光源氏と頭中将の友情は、ぐっと深まっていくのです。
後半では、C君という中学生の「不登校」を取り上げます。河合さんは、前フリとして、次の言葉を添え、状況の説明が開始されます。

もうずいぶん以前のことだ。中学生のC君は学校に行かなくなる。今でこそ「不登校」に対しては、学校もいろいろ配慮してくれるが、当時は、勝手をしている、変な奴、という感じで誰も相手にしてくれない。C君は家で悶々と暮らしている。両親も手の打ちようがない。

そこに、同級生のD君が「どうしているかと思って…」と、訊ねてきます。D君がC君に話す内容は、“普通の”大人が「不登校」の生徒に語りかけるだろうと想定される言葉とは異なり、自分の思いを素直に伝えており、なかなかユニークです。

そのうち、D君は「お前はええな、学校を休んで。僕は学校が大嫌いやけど、勇気がないし、よう休まんのや」などと言いはじめた。「勇気なんかとは違う」とC君は言ったが悪い気がしない。二人の友情は深くなり、D君は毎日のように会いに来るようになった。
D君の訪問が効果があったのか、C君に元気が出てきた。とうとう登校する気分になってきた。「そろそろ学校に行こうかな」と言うC君に、「そんなの、やめとけやめとけ、学校なんて行ってもしゃあないぞ!」とD君は言った。C君が登校のことを言いはじめると、D君は何やかやと嫌味なことを言いたてる。D君はなんだかC君の登校の妨害のために訪問してくるような感じになった。

そしてC君は登校するに至ります。「このような経過での登校もありえるんだな…」と、一件落着を感じる読者は多いことでしょう。スクールカウンセラーという専門職ではない、同級生によってC君は登校することが出来た訳ですから、河合さんが「友情」(ただし、大人ではなく少年の)に結び付けて、エッセイを構成したと、解釈してしまいそうですね。

ところが、エッセイのまとめに向かって、河合さんは、さらに“ひねり”を入れます。人と人の「関係性の綾」に迫っていくのです。次のエッセイは「一心同体の危険」がタイトルです。「承前」が予感される〆の言葉を引用して、今回の解説を終えることにしましょう。

D君とC君の友情は、学校なんてどうでもいいのだという気持ちの共有に支えられていた。嬉しそうに、あるいは努力をして学校に行く奴らのことは放っておいて、二人で安心しておれた。確かに友人のいいところは、ともかくその人と一緒にいるだけでほっとする、何となく安心だ、という点にある。しかし、この二人はそこに安住しているだけでよかったのだろうか。C君はとうとうそこを破って出てきたのだが、それは友人を裏切ることになるのだろうか。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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