（鷲田）
あっ、逆に……。
（河合）
もうなれない。決められているわけだから。だから男になった人は、もう女になれないわけですね。女になった人は男になれない。しかも、そのときに「男らしいとは何か。女らしいとは何か」というのは全部規定されているわけです。だから、一人ひとりの人間をちゃんちゃんとかたちをつけて、それを組み合わせて社会の秩序というのを構成していたんですね。それが昔の方法でした。
今回は、前回の最後の対話の続きを、冒頭で引用しています。
引き続き『臨床とことば』第3章の2つ目の見出し「ボーダレス化した大人と子ども」を取り上げます。
鷲田さんの考えをじっくりと聴いた河合さんは、フィードバックを返します。その指摘に鷲田さんは、思わず「あっ、逆に……。」と、応えるのです。その「気づき」が訪れたシーンまでを、前回取り上げてみました。
イニシエーション（通過儀礼）が社会の規範（慣習としての）として成り立っていた昔と違って、現代は「大人」と「子ども」の区別を自覚させる社会的枠組みが喪失してしまったわけで、結果として、個人に「大人にも子どもにもなれてしまう」という「内面的自由度」を与えている、と河合さんは言います。
鷲田さんは、「大人子ども」「子ども大人」が蔓延している状況の背景と理由を、掴みかねていたこともあって、河合さんの俯瞰した見方に、「えっ、」と反応したわけです。
河合さんは、「大人と子ども」から「男と女」というジェンダーにその視点を拡大させます。筆者は「コーチングの視点」として受けとめています。
冒頭の引用には続きがあります。
今はそれをやめよう、と。個人というのは、すごい可能性を持っているから、できるかぎりに生かそうではないか……高校生でも年老いたやつがおるし、70歳でも若々しいやつもおるし……。そういう意味では、僕はものすごく面白くなったと思っています。ものすごく面白くなったということは、それによる大混乱が生じるということを知っていないとね。
（鷲田）
そうなんです。その面白さがわかる手前はかなり悲惨なことというか、苦しいですよね。
（河合）
そう、そう。だから、そこを皆よく心がけて、そして「私は社会のこういう場面においては70歳として振る舞う。ところがこの場面では三歳に帰るんだ」という、そういう認識がきれいにできていたら、これはうまくいくんです。
（鷲田）
なるほど。
社会的慣習という「枠組」によって秩序は保たれる。ただし、その「物語」から解放されてしまうと何が起こるのか？ 「自由とは？」を考える視座を河合さんは提供してくれます。
さて、お二人の対話は、このあたりからだんだんヒートしてくるのですが（9ページに及んでいます）、紙幅の関係もあるので、当該見出しの最後あたりを引用しておきます。河合さんはここでも「相補性」の重要性を説かれます。“大人”であるお二人の対話を受けとめ、「枠組と自由のバランス」について、筆者も思索してみようと思います。
（鷲田）
そう言えば、先生がさっきおっしゃった成人儀礼というか、社会のはっきりした人格の型みたいなものが、逆にたとえば男が自分の中の女性性を出したり、おじいさんが自分の中の少年性を出すというようないろんな人間の可能性をギュッと抑えつけるという意味では、それは一種の抑圧であって、今はそれが外れつつある。ということは、ある意味ですごく人間を豊かにすることだけれども、その前の混乱状態というのが今あるという……。
（河合）
今、その混乱状態ですね。だから、自由度を広くするということは絶対に逆のほうがないと、バランスが取れてないとだめなわけでしょう？ ……規約とか規則とか。規約と規則がなくなって自由になったら何も面白くないのに、今は、皆はともかく抑圧を取っ払って自由になったことのほうがうれしくて仕方がないから、規約・規則で型にはめることのほうを忘れている人が多いのと違いますか。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.
