矛盾したものを持たないといかん!
(小川)新宿の街なんか歩いていて思うんですが、超高層の近代的な、一流企業が入っているようなビルもあれば、ガード下の一杯飲み屋みたいなのもある。日本は街自体にも境界線がないですよね。(河合)そうそう、日本は境界線がいろんな...
(小川)新宿の街なんか歩いていて思うんですが、超高層の近代的な、一流企業が入っているようなビルもあれば、ガード下の一杯飲み屋みたいなのもある。日本は街自体にも境界線がないですよね。(河合)そうそう、日本は境界線がいろんな...
河合隼雄さんは『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』の中で、「分裂」という見出しを設けて、論を展開します。 境界例の人と接していると、心の分裂という方法によって自分を守っていることによく気づかされる。たとえば、はじめ...
『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』の「古人の知恵」は、『論語』に続いて、ヒンドゥーの『四住期』を取り上げます。まずは、河合さんが学生期、家住期、林住期、遁世期の4つの期間の内容を説明する、最初の箇所のみを引用しま...
(河合)…… ここでもうひとつ対立的にものを見る見方で、日常語と詩的言語というのがあります。日常語はコップはコップと見てるんだけど、詩的言語ではまったく違う見方、これを異化していく見方。そうすると、宗教と科学と、今度は詩...
(中沢)……賢治の『農民芸術概論』は、大地を科学力によって合理的に変えていくけれども、それは大地を収奪・破壊したりすることじゃないんだ。農業というのは、母性の大地を相手にしながら、それにお父さんの科学の力を注ぎ込むことに...
(中沢)恐るべき生命力。あれを論理の中に必死に抑え込んでいって、しかも、一貫してますね。いつも矛盾したものを同一物として見ていく。それを外側から包摂していく自覚の視点を持っていた。それが西田の場合は、善だとか仏教だとか言...
(中沢)だから、賢治って、そういう意味で言うと、非常に倫理的で潔白な人だけども、自分は努力してそうなろうとしている。あの人、生命力が溢れている人ですから、性欲にしたって、必死で頑張っていると思うんです。ただ、そうじゃない...
(河合)僕は宮沢賢治の『ビヂテリアン大祭』(以下宮沢賢治の作品はちくま文庫)というのはね、読んだ時から大好きだったんです。今度アメリカへ行った時、今からする話をしてやろうかなと僕は思っている。というのは、僕らの仲間に、ヴ...
(鷲田)先生がよくご本で書いていらっしゃるイニシエーション=通過儀礼とか成人儀礼というのがありますけれども、そういうイニシエーションが明確に存在する時代というのは、まずいったん終わって次の段階に行ける「人間の節目」という...
(鷲田)私が中学生ぐらいのときに、日本に本格的にロックが入ってきたんです。ビートルズが中学1年生のときに入ってきまして、あのとき、今でもそうですけれども、初期の曲を全部英語で歌えるんですね。でも今だから改めて意味を考える...
(河合)……日本人には、調和の感覚は美的感覚としてありますわね。日本人は倫理観という場合、美的感覚がすごく大事になってくるじゃないですか。向こうは一神教でしょう。だからやはりインテグレーションと言いたいし、どこかに一なる...
河合隼雄さんの『大人の友情』は、8番目のテーマとして「裏切り」を選択し、28話から4つのエッセイが配されました。その最初のエッセイは、太宰治の『走れメロス』を取り上げます。太宰の描く究極の「信実」を読み込み、河合さんは、...
前回の解説で、「自己実現とは、つねに発展してやまぬ過程であり、これまで営々と築き上げてきた価値観をすて去ることを本人に迫ることがある」と、説明しました。『<心理療法コレクションⅠ>ユング心理学入門』の中で、河合隼雄さんは...
私たちは、何かの現象を説明する場合に、自明のごとく「近代科学のパラダイム」を用いているようです。河合隼雄さんの『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』を読み進めていくと、「思想家としての河合さん」が現れてきます。前回の...
『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』は「自我」について、河合隼雄さんはユングがそれに加えて「自己(self)」という概念を提示したことを解説します。 自我が確立するためには、それはそれなりに統合性を持たねばならない...