やっぱり本でもハウツー式で書いたほうがよく売れますからね

(鷲田)
私が中学生ぐらいのときに、日本に本格的にロックが入ってきたんです。ビートルズが中学1年生のときに入ってきまして、あのとき、今でもそうですけれども、初期の曲を全部英語で歌えるんですね。でも今だから改めて意味を考えるんですが、中学生のときなんか「アイラブユー」くらいしかわからない。

前回に引き続き、『臨床とことば』の第3章「臨床における“距離”」の最初の見出しである「哲学学とハウツー時代からの離脱」を取り上げ、語ってみようと思います。
ちなみに、哲学にさらに「学」を加える「哲学学」は、5月15日にアップした鷲田清一さんは哲学を本来の“philosophy”に近づけようと奮闘しているの中で語られる、鷲田さんの造語です。

鷲田さんは、ビートルズに熱狂した中学生であったことが伝わってきます。冒頭の引用の後で、「“アホナホーリョー……? 何やろ?”と思いながらも歌っていた。意味もわからないで歌っていた、そういうロックの時代がずっと続いていたんですね」と、哲学の捉え方が時代と共に変化してきたことを、ロックとダブらせて指摘しています。

“アホナホーリョー……”は、ビートルズの何の曲であるのか、その前に明らかにされているのですが(初期の曲がヒントです)、それが“I Want to Hold Your Hand”であると、ピンと来た人は、かなりのビートルズマニアですね。ジョン・レノンがビートを効かせてシャウトする「抱きしめたい」です。

ビートルズは1970年に解散します。鷲田さんは日本のロックの歴史を、「70年代とか80年代になってはじめて日本語のロックがはじまって、サザンオールスターズの曲なんかを、腹から出せる声で歌えるようになったんですけど。」と、指摘します。「なるほど…」と、合点しました。

ロックと哲学を被せて、鷲田さんは次のように説明します。

(鷲田)
哲学も似ていまして、西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一」なんていうのは、「アホナホーリョー……」と一緒で、意味がわからなくても完全になりきって歌っているのと、ひょっとしたら近かったのかもしれない。だから、あのことばの感触といいますか、あるいは、何かすごいものを自分は掴んでいるような感触だけ、こっちの方向に行くと、そういうものを掴めるんじゃないかという感触だけがあったんですね。
(河合)
僕らの若いころも、哲学のことばを、そういう感触みたいなものを喜んで、ある程度やっていたんだけど、だんだん、だんだん実態とそぐわなくなってきたと言えるでしょうね。

米国で誕生したコーチングは、世紀をまたぐタイミングに日本に入ってきました。河合さんの指摘を受けて、鷲田さんは「哲学とハウツー物」の異同に触れつつ、時代は「臨床哲学(臨床の知)」が求められている、と説きます。
日本において今、「コーチングに何が求められているのか…?」を筆者は思考しています。

(鷲田)
そうですね。つまり、そういうものに対してある種の幻滅みたいなもの、あるいは、これはどこまで行っても行き着かんわと。で「おれはどうしようか」というときに、ハウツー物が出てくるのはよくわかるんですけれども。ハウツー物になると、哲学の幸福論と似ているところと似ていないところがある。似ているところは「幸福とは」とバシッと言ってくれないと落ち着かないという、それこそ「臨床の知」の反対ですね。臨床の知というのは「ああ、こんなこともあった」とか、「この間はこうだったのに」とか、辻褄の合わないところを、地べたをベターと這うような思考法だと思うんですけど。……

河合さんは、「ハウツー物のほうが考えることは少ない。考えなくてもできますというね」と、応えます。河合さんは、変化してきていると言いつつ、現実を突きます。

(河合)
皆ちょっとわかり出してきたか……でも、まだそっちに揺れてますね。やっぱり本でもハウツー式で書いたほうがよく売れますからね。これはアメリカの影響も大きいですけどね。

第3章の最初の見出しである「哲学学とハウツー時代からの離脱」について、次回も取り上げることにします。後半は「幸福とは?」が深く語られます。「文藝春秋」のアンケートが話題になったところを最後に引用することにしましょう。鷲田さんはアンケートを答えるにあたって、何を考えたのか……については、次回の冒頭で引用しますので。

(河合)
この間、「文藝春秋」が「幸福」についてアンケートを取って……僕は答えませんでしたけれども。
(鷲田)
「答えません」と答えられたんですか。
(河合)
僕は全面コウフクしたんですよ。「降伏(=幸福)しました」って(笑)。もう書かなかったんです。
(鷲田)
あれ、私も原稿を書いたのでパラパラ見てたんですけれども。……


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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