献花の列に並び、祭壇の前まで来た時、先生の遺影がとても明るく柔らかい光で包まれているのに気づき、はっとしました。そしてすぐに、ライトが先生を照らしているのではない、先生自らが光を放っておられるのだと感じたのでした。
献花を終えたあと、その方は最後まで私に背中だけを向けたまま、会場の外に紛れて見えなくなりました。
『生きるとは、自分の物語をつくること』に収められた、小川洋子さんの「二人のルート～少し長すぎるあとがき」を読み込み、コーチングを語ってきました。30ページに綴られた、この「あとがき」の最後3ページは、2007年9月2日、京都での「お別れの会」に出席した小川さんの“想い”が語られます。
広い会場は一杯で、小川さんはその会場の後ろの片すみに座っています。河合隼雄さんの遺影は遠くに見えます。冒頭の引用にある「その方」とは…
私の斜め前に、三十代くらいと思われる女性が一人座っていました。その人は会の間中ずっと泣いていました。大げさに声を上げて泣くのではありません。ただ黙ってハンカチで口元を押さえているだけですが、その背中に、ああこの人は今泣いている、と分からせる静かな表情があります。（中略）
私は斜め前の彼女の背中ばかりを見つめていました。その人がどういう立場の方なのかは、もちろんわかりません。けれどそこからは、あまりにも素直な、まるで生まれたての赤ん坊が産声と共にこの世に向かって発するかのような悲しみがにじみ出ていました。
「悲しいですね」
声にならない声でその背中につぶやいた時、顔は見えないはずなのに、なぜか目と目で合図を送り合った気持ちになりました。
「コーチングとは？」と、よく尋ねられます。書店に行くと、タイトルに「コーチング」と付された本が、ずらりと並んでいます。なかには「？」が点滅してしまう回答が書かれている本もありますが、オーソライズされた答えは「コーチングの3原則」で説明することができます。
その上で、「わかりました。ただ3つではなく、一つの言葉だけで、コーチングは語れないのでしょうか？」と、質問された場合は、どのように答えればよいのか…
たった一つの言葉… これほど難しい質問は存在しないような気がします。
二言であれば、「受容と共感」であると明言します。「CBLコーチング情報局」として、揺るぎない確信をもって語り続けていますから。
「受容によって共感は深まる」「共感できなければ受容は生まれない」「……」、前後を入れ替えてみると、二つの言葉のウエイトも変化するようですね。それでも、「お願いです、とにかくどちらかを選択してください」と、迫られたらどうしましょう（笑）
『生きるとは、自分の物語をつくること』の、河合さんと小川さんの対話、そして「二人のルート～少し長すぎるあとがき」を読み込んだ今、「共感」を選ぶことにします。
対話がここで打ち切られたこと、私が長すぎるあとがきを書かねばならなくなったことにも、きっと何か意味があるのでしょう。世界をつなぎ合わせる計り知れない働きが、そこにも作用しているに違いありません。
「そうですよね、先生？」
と私はまた先生の写真に話し掛けます。先生はいつもあの笑顔です。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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