尊敬する「雲の上の先生」と「対等である友人」の関係とは?

河合隼雄さんの『大人の友情』の4話目は「これからはボクが友人に」です。この最晩年のエッセイ(70代半ば)は、河合さんが昔を振り返り、その時、高まった感性が、今訪れているかのような語りで、人生の来し方が綴られています。
前回エッセイの「類は友を呼ぶ」では、1959年(31歳)にフルブライト奨学生としてカリフォルニア大学ロサンゼルス校に留学していた頃の「想い」を振り返っています。今回は、30代の半ばのスイスでの体験からエッセイがスタートします。

1962~65年の間に、私はスイスのユング研究所というところに留学した。ここでは世界各国から、ユング派の分析家の資格を取るために研修に来ている人と共に学んで、念願の資格を取ることができた。
分析家になるためには、何と言っても「己を知る」ことが根本にあり、訓練の中核は自分自身が分析を受けることである。私の分析家は、マイヤー先生という男性分析家、フレイ先生という女性分析家の二人だった。

優れたカウンセラー、そしてコーチになるためには、「自分自身が分析を受ける」ことが必須になります。これがスーパービジョンであり、分析を担当するベテランのカウンセラー、コーチは、スーパーバイザーと呼ばれることを、補足しておきましょう。

河合さんは、尊敬するマイヤー先生に「この三年間で得たものは何か?」「何か心残りのすることはないか?」と問われると…

私は多くのことを学んだことをあげた後に、一つだけ残念なことは、共に学びながら西洋人の友人が一人もできなかったことだと言った。もちろん、相当に親しくつきあっている人たちはあったが、ほんとうに「友人」と思える人が居なかったのである。

この河合さんの言葉に、マイヤー先生はどう答えたのか? とても興味が湧いてきますね。

こんな細かいことを言わず、ただ友人ができなかったと言っただけだが、先生はすぐ了解したのだろう。「それは仕方がないことだ」と言った。そして、「残念なことに、お前が一緒に訓練を受けた者のなかには、お前の友人になるほどの者はいなかった」

あらあら、と感じるマイヤー先生の言葉です。河合さんは「これには少し驚いたが、先生のものの言い方は、いつもこのように端的であった」と、語ります。河合さんは、ここでは、特に「端的な表現」について、解説していませんが、コーチングにおけるプロコーチにとっても、この「端的な表現」には重要な意味があります。「まわりくどい表現」は、本心をカモフラージュしようとする場合に、往々にして生じてしまうからです。

さて、この後につづくマイヤー先生の言葉というと…

ところがもっと驚くことが先生の口をついて出てきた。「それでも心配はいらない、これからはボクが友人になろう」

このエッセイのタイトルは、このマイヤー先生の言葉でした。河合さんは「このときの先生のほほえみと、私の受けた感激は今も忘れない」と、力を込めて言葉にします。河合さんは、尊敬する「雲の上の先生」と「対等である友人」の関係について、思いを巡らせます。

これによってわれわれの師弟関係が友人関係に変化した、と私は思わなかった。私は一生の間、マイヤー先生に対して、やはり「先生」として感じ、またそのように接していたが、友人であることも確信していた。それは極めて深い信頼関係であり、たましいのことに関して言えば、そこには上下も優劣もないのであった。長い期間の間には、それを揺すぶるようなこともあったが、先生の亡くなられるまで、あるいは、その後も、われわれの友人関係は続いている。

今私は、コーチングの3原則を振り返り、じっくりと嚙みしめています。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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