
(河合)
…… だから仏教的な世界観とか仏教的なものの見方とは、近代科学を乗り越えるという点で、非常に役に立っているのではないか。しかも、心のことを科学的に、と呼べるかどうかわかりませんが、いちおう「心」を科学的に考える場合に、「心の構造」などということは、西洋で意識とか無意識と言う前に、仏教では唯識などでかなり昔から考えているでしょう。そういう点で仏教は現代に通じる知恵をいっぱい持っています。いわゆる自然科学も人文科学の分野でも、仏教的な考え方は非常に大事ではないかと思います。だからこだわり続けているわけです。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の最終章(6回目の対談)<大日如来の吐息…科学について>の最初の見出し<戦争体験から科学へ>は、5ページで構成されるのですが、中沢さんは、時折一行程度の合いの手をいれるだけで、圧倒的に河合さんの一人語りなのです。引用はその最後のパラグラフです。
次回は、次の見出し<砂漠のなかを「科学」という車で……>に移りますが、今回で5回ほど続けた<戦争体験から科学へ>について、“筆者なりの総括”をしてみようと思います。
河合さんは昭和3年生まれですから、多感な時期すべてが「昭和の戦争」と共にありました。その間日本は「軍国主義教育」に覆われ、多くの国民が、その環境に適応(洗脳?)していくことで、“心の安寧”を一応得ていたわけです。
全国民レベルが「神州不滅の日本」(神州という言葉そのものは美称とされていますが)であることを刷り込むことで(無意識的?)、日常生活に齟齬をきたさないようにする「一種の知恵」といえるのかもしれません。ただ、そのことを信じることができない人は…辛いですよね。河合さんは「その辛さ」を抱え続けていた少年でした。精神医学でいう「離人症」的に、日々を過ごしていたのかもしれません。「辛さ」に耐えられなくなった河合少年は長兄に手紙を出します。その経緯については、前々回に取り上げています。
日本の完膚なき敗北で戦争は終結しました。明治維新以来、成功に成功を重ねていた「富国強兵策」が崩壊したわけです。合理的精神を失わなかった河合少年にとっては予想通りの展開です。この決定的な体験を踏まえ、河合少年は理科系の道に邁進します。大学の専攻は「科学の女王」とも称される「数学科」です。
その数学科に集ったメンバーは、当たり前ですが、全員「理科系」です。彼らの中で交わされる会話は「文科系はいいかげんである」でした。バカにしていたわけです。ただ河合さんは、その環境にも疑問を感じるようになります。ここから第6章の<戦争体験から科学へ>がスタートします。
さて、「戦後の日本」はというと…「精神万能主義」がものの見事に「科学万能主義」に宗旨替えしてしまうのですね。若くして「自己実現の苦しみ」を体験した河合さんは、その「科学万能主義」にも疑問を感じるようになります。
河合さんが「臨床心理学」の道に歩を進める(転向)のは、30代になってからです。ただし「科学の女王」に近づいた河合さんにとって、「理系科学者」の血はなかなか薄まらないのですね(笑)。西洋科学のベースであるキリスト教の方にむしろシンパシーを感じており、あいまいな「仏教」が嫌いでした。
その河合さんが、仏教に惚れ込むきっかけについては<今回より『ブッダの夢』を取り上げ、コーチングを語ってまいります>のなかで紹介しています。
筆者は今「拠り処」(「所」の方が一般的だと思いますが、あえて「処」にします)について、想いを巡らせています。河合さんにとっての「拠り処」は、鎌倉時代に顕現した「日本仏教」です。チベット仏教の厳しい修行をくぐりぬけた中沢さんも同じく「日本仏教」が「拠り処」です。
この「コーチング大百科」では、確固たる「拠り処」をもつに至った哲人を取り上げてきました。稲盛和夫さんは「臨済宗の僧侶」です。そして渋沢栄一は「孔子の儒教」に「拠り処」を見出すことができた。
今回は、河合さんという哲人の人生を振り返る回になりました。次の見出し<砂漠のなかを「科学」という車で……>は、メタファーですが、さてどのような対話が繰り広げられるのか、読み込んでみようと思います。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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