(河合)
僕は全面コウフクしたんですよ。「降伏(=幸福)しました」って(笑)。もう書かなかったんです。
(鷲田)
あれ、私も原稿を書いたのでパラパラ見てたんですけれども。不思議なのは、正直言ってゾクッとするのがやっぱりないですね。原稿用紙五、六枚のものですから、結局ズバッと切ろうと思うと、昔の哲学的なものかハウツー物に近いかたちになる。だから、ベターッと這って、しみじみともう一度幸福を構想するというのは、なかなかあの枚数ではやっぱり難しかったですね。振り返ると、19世紀は幸福論が本当にピークだったんですね。
前回の最後に引用した会話の続きから始めています。「文藝春秋」が「幸福」について、さまざまな分野の識者にアンケートをとったことに対して、河合さんは「僕は答えていない」と言うのです。まさに「河合さん」です(笑)
鷲田さんはアンケートに答えていたようなのですが、「幸福とは?」という質問に対して、多くの人が「これだ!」という答えを期待していると思うが、「臨床哲学」の視点では「ズバッ」とは答えられない。「ベターッ」と地を這う目線に「臨床の知」は立脚する… という「訴え」であると筆者は受けとめました。
ちなみに、鷲田さんが「ゾクッ」という表現を用いる場合、それは明快に評価です。鷲田さんは河合さんの話に「ゾクッとすることばですね。」と返しています。つまり、「ゾクッとしない」のは「評価に値しない」、ということです(笑)
(河合)
そのころは幸福の幻想もあったんですよ。要するに、人間がここまで強くなってきて、人間がこれだけ深く思索することによって幸福が掴めるんじゃないかというふうに、皆思ったんじゃないですか。ところが、おっしゃったように、出てくるのは戦争とか、まるきり違う逆のことがいっぱい出てきて。20世紀はそうでしたね。そして、そういう方法では、皆がもうだめだと思うようになったんだけれども、幸福のことを考える人、あるいは幸福の話は聴きたいという人は、今でも多いんじゃないでしょうかね。
鷲田さんは、19世紀にも「幸福論の虚しさ」のようなものは現れていたように感じると言葉にします。
(鷲田)
……たとえば、これは20世紀に入ってからの作品ですが、メーテルリンクの『青い鳥』というのは、幸福は結局、よそにいくら見つけてもだめだぞと言って、帰ったら、実はもっと身近なところにそれはあった……。これは、そんなに輝かしい幸福のイメージではないですよね。
「CBLコーチング情報局」でも『幸せの青い鳥』を取り上げて「幸福とは?」について考えてみました。フランクルの言葉からの連想です。
鷲田さんは、『青い鳥』を、アンニュイな気分で、捉えているようです。日本の哲学(観)が、「生きているからだから遊離」していることに対して(これを鷲田さんは哲学学と名付けます)、何とか日本の哲学を、「臨床」の視点で「生き返らせたい」という強い想いがあるためか、2ページ以上にわたって、語り続けます。河合さんは合間に、「うん、うん。」、そして「ええ、ええ。」と相づちを打ちます。
鷲田さんの語りを受けとめた河合さんは、どのように応えるのでしょうか…
15ページに及んだ、第3章の最初の見出し「哲学学とハウツー時代からの離脱」の最後の対話を引用し、次回、「ボーダレス化した大人と子ども(2番目の見出し)」につなげてまいります。イニシエーション(通過儀礼)がテーマとなります。
(河合)
……天下国家を論じられるという幻想の中にただ浸っていただけで、論じてみても何にも役に立たないということが、今わかってきて。そうすると、本当に自分の生きている世界で「自分が幸福とはどういうことか」とか「自分がおいしい水を飲むにはどうしたらいいか」というようなところに近づいてきたというのは、ある意味で言うと「各人が自分相応に考え出した」という言い方もできますね。昔の青年は、ある意味逃げていたわけですよ。
(鷲田)
逆に壮大なほうにですね。
(河合)
気宇壮大に見えるだけで、本当は現実から逃げていた。それこそ「末は博士か大臣か」というわけで、なるはずがないのに皆そう思ったりしていた。それが今はもっと「自分の現実の中で幸福に暮らすとはどういうことか」というふうに考え出したときに、今までの哲学のスケールが大きすぎたから、もういっぺん現実に立ち返って哲学をするということが大事だということかもしれませんね。
(鷲田)
確かなものの水準とか規模が変わってきた?
(河合)
そう、そう。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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