『＜心理療法コレクションⅢ＞生と死の接点』の「序説」で、河合さんはフロイト派のエリクソンがユングの考えを取り入れたことを語っています。
フロイト派のエリクソンがユングの考えも取り入れて、人生全体を視野に入れたライフサイクルの考えを発表すると、それはアメリカにおいて随分ともてはやされることになった。エリクソンの考えは日本にも輸入された。人生の生涯を考える上で重要な手引きとして、……彼の提唱したアイデンティティという考えとともに……ひろく日本の学界においても受け入れられたのである。（序説ⅷページ）
エリクソンのライフサイクルの考えは「心理社会的発達論」のことです。CBLコーチング情報局でも取り上げ解説しています。
エリクソンはユングの考えを取り入れつつ、独自の視点で「発達論」を提唱したのです。ユング派の河合さんも、ユングの考えを尊重しつつ、ユングと異なっている見解を提示しています。
私としては、ユングの考えに従って、人間の一生における青年期、中年期、老年期などの意味について考え、発言してきた。それらをまとめたのが本巻であるが、私なりに、ユングと少し異なる考え方をしているところがある。その一番大きいところは、人生の前半と後半にわけて考えるのは一応わかるが、すべての人についてこのように言えるのではなく、ユングが人生の前半と後半にわけて述べている仕事は、あんがい、人間の一生を通じてまじっているのではないか、と思うのである。このことをもう少し推しすすめて言えば、人生を発達段階にわけてみる見方は有用であることは認めるものの、それと矛盾するようだが、人生は生まれてきたときから「全体性」を有しており、段階などわけることができないという見方も同様に大切と思いはじめたのである。（序説ⅸページ）
ここで注目したいのは「全体性」です。アドラーの打ち立てた「個人心理学」は、その中心に「全体論」と「目的論」があります。河合さんは、ここではアドラーに触れていませんが、その「全体論」と、ほぼ同じ考え方に立脚していることが伝わってきます。
河合さんは、「すべての人がその発達段階を踏むべきであるという考えに囚われると、カウンセラーは、それに従ってクライエントを判断したり指導したりすることが絶対的にできることになる。そこでは判断する人とされる人、指導する人とされる人との区別が明白になってくる」、と否定的な見解を述べます。
これに対して、私は人間のことはもっとわからないし、不明確であると思っている。しかしだからと言っても、何もわからないというのではない。このような段階をわけることや、それぞれについて人生の課題を考えることは、頼りになる考えとして尊重している。ただ、それを絶対的真理とか科学的事実とは思っていないだけである。ユングが個性化と言い、あくまで個人個人によって異なると考えたことを、人間の生まれたときから……つまり人生の前半においても……重視することが必要と考えるのである。心理療法家は二律背反的なことを、その意味を知りながら意識して行うことが必要と考える。（序説ⅸページ）
「ユングの言うとおりに従おうとする人はユング派ではない」と河合さんは言います。ユンギアンであっても河合さんは、柔軟な思考でクライアントに接します。コーチングもクライアントファーストであり、まさに河合さんのよるべきスタイルに共通点を見出すことができますね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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