「世界の昔話」から「新たな物語」は編み出される!

<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』は「序説」のあと、「生と死の間」という大きな章のなかで、「1 ライフサイクル」「2 元型としての老若男女」「3 老いの神話学」「4 老夫婦の世界」「5 ファンタジーの世界」の5つのテーマが語られます。今回のキーワード解説は、「1 ライフサイクル」の「古人の知恵」を取り上げます。

河合さんは冒頭で『グリム童話』の「じゅみょう」を引用します。神様が動物たちの寿命を定めるお話です。最初のロバには30歳の寿命を与えると告げます。ところがロバは、荷役に苦しむ生涯の長いのを嫌い、もっと短くしてほしいと神様にお願いします。神様は同情して18年分短くすることを約束します。次いで犬、猿も同じく30年の長さは辛いと訴え、同様に12歳と10歳分ほど短くなります。そこへ人間がやってきます。人間だけは30歳の命は短いと残念がるので、神様は、ロバの18歳、犬の12歳、猿の10歳の合計分を人間に与えます。ここから面白い展開になります。

人間は30年の生涯を楽しんだ後、あとの18年は荷役に苦しむロバの人生を送り、続く12年は噛みつく歯も抜けてしまった老犬の生活をし、そして最後の10年は、頭が弱った愚かな猿となり、ばかげたことをして子供たちの笑い者となってしまうのです。
河合さんは「なかなかシニカルな話である」とコメントし、この「じゅみょう」の話の意図を次のように解釈します。

この物語によると、この延命の結果はあまり幸福とは言えないが、やはり特徴的なことは、30歳までを人間の人生として、壮年までを人間の姿で、それ以後の老いていくところを動物の姿によって示しているところである。これは、ヨーロッパにおいて、壮年像が中心に据えられ、いつまでたっても壮年の強さが保たれる、あるいは、保ちたいとする錯覚に対して、シニカルな批判を試みているものとも受け止めることができる。(18ページ)

河合さんはその人生を通して、キリスト教がベースの西洋文化と、日本(東洋)文化を対置させ、それぞれを俯瞰し、そのうえで解釈を試みる、というスタイルを確立します。つまり河合さんの思想です。

上記の『グリム童話』の解釈に、河合さんの視点が反映されています。『グリム童話』はWikipediaの冒頭、次のように説明されています。

『グリム童話集』(グリムどうわしゅう、独: Grimms Märchen)は、ヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟が編纂したドイツのメルヒェン(昔話)集である。メルヒェンとは「昔話」を意味するドイツ語で、グリム兄弟はメルヒェンを収集したのであり、創作した(創作童話)のではない。

臨床心理学者としての河合さんは、多くの諭文を発表する一方、それとは趣の異なる膨大な著作も著されています。今回紹介する“論文”もそうですが、河合さんの著作に見られる特徴は、世界の「昔話」を取り上げ、その解釈に挑み、そこから新たな「物語」を編み出していく、という姿勢です。まさにリフレーミングです。

河合さんが亡くなられた後に発刊された6冊の当該アンソロジーのなかで、この『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』は、その世界中の「昔話」が豊富に取り上げられています。次回のキーワード解説でも、そのあたりを取り上げてみることにします。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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