河合隼雄さんの『大人の友情』の21話は、6番目のテーマである、「つきあい」は難しい、の2話目「つきあいはうっとうしい」です。1話目で、「つきあい」という言葉にこめられた意味を「義務感」として象徴化させた河合さんは、どのように「うっとうしい」を語るのでしょうか?
冒頭は、まさに「鬱陶しい」スタートです。
相談室を訪れる人が、つきあいの難しさやそれによって疲れ果てていることを訴えることはよくある。つきあいは「うっとうしい」ともよく言われる。漢字にすると「鬱陶しい」で、字を見ているだけでも気分が沈む感じがする。何もかもがからみあって重く沈んでゆく気分である。
河合さんは前半で、「あなたは、つきあいを口実にして、いつも好きなことをしている」と、夫を攻め立てる夫婦の「あるある」を、面白おかしく話題にします。その後、エッセイの半ばで、欧米と対置しながら、日本の組織文化に迫ります。
人間関係は、欧米のように個人対個人の関係をベースにして考えるのと、日本のように集団的一体感をベースにして考えるのでは大いに異なってくる。会社のなかで、一つの部門が一体感をもっているとき、そこから一人でもはずれるのは、その個人にとって、あるいは全体にとっても危機的状況になる。一体感は不文律的絶対命令として作用している。したがって、「つきあい」は極めて重要なことになってくるのだ。その場に居合わさないということは、日本人にとっては危険な状態なのである。
その国の文化は、過去からの歴史で形成される「ナラティブ・物語」によって、共有されていきます。国民のメジャーが、「あたりまえの感覚」で受容していますから、それに疑問を持ち、それにふさわしくない振る舞いをしている人たちが、生きづらくなってしまうのは、「自明の流れ」と言えそうです。
河合さんは2007年に亡くなられていますから、世界が新型コロナを経験した現在、「その場に居合わさないということは、日本人にとって危険な状況なのである」、という、河合さんの“確信”は、リモートワークなど、DXの進展も相まって、かなり薄まりました。強固であった日本の「ナラティブ・物語」も、溶けていく可能性が予感されます。
後半で河合さんは、友人がいなくなったと、悩んでいる人の事例を紹介します。その人は、「ほんとうの友人は心が通じていることが肝心」と思っており、「形式的儀礼など無視すべき」と考え、冠婚葬祭に関して何もしなかったところ、友人だと思っていた人たちと、疎遠になってしまっていることに気づくのです。その人は、「結局、人間なんていうのはそんなものでしょうかね」と、言います。
河合さんの、実際にこの来談者に関わっていく(寄りそう)姿は、コーチングそのものであることが伝わってきます。最後の河合さんの言葉を引用して、今回の解説を終えることにしましょう。
確かにこの人の言っていることは正しいとも言える。こんなときカウンセラーは、それが正しいとか正しくないとか評価することはない。しかし、こんなことを言っているときのその人のいらいらしている感じは伝わってくる。イライラしている限り、その人は自分のことに満足していないのだ。「なんだか、自分の考えに納得しておられないように感じますが」と言ってみる。
話を簡単にしてしまうと、いろいろ考えた末、この人の出した結論は「形がなくとも心が通じると思うところに、傲慢さがあった」、「その傲慢さが友を失ってゆくことにつながった」ということであった。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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