河合隼雄さんの『大人の友情』の22話は、6番目のテーマである、「つきあい」は難しい、の3話目「欧米の社交」です。一つ前のエッセイでは「つきあいはうっとうしい」をタイトルにし、日本文化の「一心同体」性を、欧米と比較しながら、俯瞰した筆致で河合さんは語っています。この3話目は、米国、そしてスイスに留学し、欧米文化を体感している河合さんが、山崎正和『社交する人間―ホモ・ソシアビリス』（中公文庫）を引用しつつ、欧米のサイドに立って語りを進めていきます。
山崎は社交を語るのに、「礼儀作法の即興劇」という表現をしている。社交の場においては、気まま勝手な行動は許されない、といってそれが儀礼のようにすべてを決められていては、社交の面白みがなくなる。そこには即興性が必要とされる。適当な笑いが歓迎されるので、軽口や冗談がとび交うが、これもある種の制約がついている。山崎も「最大のタブーは場違い」であると言っている。笑いの調子に乗り過ぎて、場違いの高笑いをしたり、下品なジョークを言ったりしてはならない。社交もなかなか難しい。
この引用は、欧米に限らず、日本においても適用されるだろう視点です。ただ、日本では、「大人」になる条件として「礼儀作法としての即興劇」を体得すべく、トレーニングを積む環境は、社会に備わってはいません。もっとも、「空気を読む」という、実体化できない（“見える化”されていない）能力を、多くの日本人が、いつの間にか身につけており、そのことが暗黙知として共有されています。解明すべき研究テーマ（社会学として）かもしれませんね。
社交的であることは、欧米の社会では大人になるための大切な条件と言っていいだろう。社交性をちゃんと身につけるように、子どもたちは訓練される。家庭でしつけられるのはもちろんだが、学生の寮などでも、このようなしつけがなされている。
この後河合さんは、「社交」という言葉に感じる日本人のイメージを推測します。
日本人の場合は、一体感を基にする人間関係が理想像のようにしてあるので、「社交的」などというと、心は関係なく上手に立ちまわる、というイメージをもつのではなかろうか。
欧米文化において「社交」は、友情に欠かせないことであり、それによってこそ個人と個人が関係をもてている、と河合さんは捉えます。そして、「個人がよほどしっかりしていないと社交は成立しないし、それほど強い個人というのは、他人の支えなしでもいられると感じる」、というコメントを添えて、「個人主義」に立脚する欧米の「社交文化」を、河合さんは肯定します。もっとも、河合さんのエッセイに通底するパターンとして、最後は、必ず“ひねり”を入れますから、ここで終わりません。
欧米文化と日本文化は異なる、という視点はオーソライズされています。ただ、「人間というものは、根っこではどこかつながっている」、と河合さんは捉えているようです。「人間みな兄弟姉妹」という表現は、乱暴すぎますが、「共通するところは見出せる」という、河合さんの視点に筆者は共感しています。コーチングの哲学でもありますから。
アメリカの友人の生き方などを見ていて、さすがに大したものだと思って、二人だけでそんなことを話しあっていると、「社交もうっとうしい」という言葉がアメリカ人から出てきて、あれっと思ったことがある。日本人のしがらみとは味が違うが、やはり、パーティーに誰を呼ぶか、あるいは、招待されたのでそのお返しにどうすればよいかなど、実にあれこれ考える。そして、パーティーはいつも、「素晴らしい」もので、全員が明るく楽しくふるまうことになっているが、実のところ、帰ってからゲンナリというのもあるようだ。やはり、人間関係はどのようであれ簡単ではないのだ。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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