
(中沢)
恐るべき生命力。あれを論理の中に必死に抑え込んでいって、しかも、一貫してますね。いつも矛盾したものを同一物として見ていく。それを外側から包摂していく自覚の視点を持っていた。それが西田の場合は、善だとか仏教だとか言われることになるかもしれないけれども、べつに仏教とか禅を論理化したわけじゃない。彼が抱えていた生命の実感を論理化していく一本の筋があると思います。宮沢賢治はもちろん哲学のような表現はしなかったけれども、彼の生命観とか、世界観というのは、哲学で言うと、西田幾多郎なんかとかなり近いなっていう感じがして。
(河合)
それはすごく面白いし、同感ですね。
引用は、河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』の第2章「宗教と科学は対立しない」にある3つ目の見出し、「『春と修羅』の生命観」の中にある語り合いです。
Wikipediaで『春と修羅』をチェックすると、冒頭で次のように説明されています。
『春と修羅』(はるとしゅら)は、宮沢賢治の制作した口語詩。また、同作品を収録した詩集のタイトルでもある。賢治の生前に唯一刊行された詩集として知られる。
その「序」は、次のようにはじまります。『ちくま日本文学003宮沢賢治』に収録された「春と修羅(408ぺ―ジ)」を引用します。
わたくしという現象は
仮定された有機交流電源の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょにせはしなくせはしなく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電灯の
一つの青い一つの照明です
(ひかりはたもち その電灯は失はれ)
……
さて、前回までこの第2章で語られる宮沢賢治の作品について、補足解説をまあまあ書いてきました。この3つ目の見出しに登場する『春と修羅』も、以前読んでいたので、気合を入れてやってみようと思ったのですが……
タイトルに登場するにもかかわらず、河合さんと中沢さんは、この『春と修羅』をまったく話題にしていないのです。ひょっとして編集者が、このタイトルを考えたのではないか…とも想像します。
ただ、河合さんは宮沢賢治の生きざまを、繰り返し「修羅」ということばで表現しているので、編集者が気を利かせて、タイトルにしたのかもしれません。
宮沢賢治の作品として発表されたものは、ほとんどが「童話」です。詩集は『春と修羅』なのですが、それもわかるような気がします。というのも、賢治の自己開示そのものの詩集だからです。「修羅」です。最愛の妹、とし子を亡くした、そのときの感情も虚心に綴られています。
「詩」は表現形態を変えた一種の「私小説」です。ただし詩の形式は、メタファーを駆使して「私」を隠します。一方で「小説(物語)」はフィクションであり、「私」とは遠い距離の作品です(私小説を除き)。しかも宮沢賢治は「童話」という纏いでくるみます。その多くが「外国(っぽい)世界を舞台にした動物のお話」であり、読者は直接賢治と結び付けることなく読むでしょう。
花巻市の「宮沢賢治記念館」を参観して、気づいたことがあります。宮沢賢治とは「農民教育者」であり「肥料設計者」であり「稲作指導者」なんですね。農業に過酷な東北(岩手)の環境を、科学的な知見を総動員して変革しようとした「農業振興家」が「表」の姿です。
中沢さんは宮沢賢治を「活火山のような人」であると喩えます。河合さんは「非常に日本人ばなれしたものを持っていた」と言葉にします。そして、「教師をしていた時でも、それはいまから言うとむちゃくちゃなことをやっていたんじゃないですか。ものすごく面白かったらしいけどね。」とエピソードを語ります。
実際、宮沢賢治の童話作品は、生前ほとんど発表されていなくて、「死後、主に草野心平の尽力により多数の作品が刊行された(Wikipedia)」のですね。
宮沢賢治は自身の「修羅」、そして「非情な悲しみ」(『ブッダの夢』第2章6番目の見出し)を抱えながら、それを「童話」を紡ぐことで、自らの救済を試みたのではないか、と筆者は空想しています。
今回は少しコーチングから離れたかもしれません。次回は『ブッダの夢』にもどって、コーチングを語ってまいりますので。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.