河合さんの「相づち」は、鷲田さんに「気持ちのよい開示」をもたらした

(鷲田)
先生がよくご本で書いていらっしゃるイニシエーション=通過儀礼とか成人儀礼というのがありますけれども、そういうイニシエーションが明確に存在する時代というのは、まずいったん終わって次の段階に行ける「人間の節目」というのが、単に観念としてではなくて、本当に痛い思いもさせられて現実に存在しましたですよね。昔は。ところが私たちの今の社会というのは、モラトリアムと言うとえらく通俗的ですけど、いったん終わって次のステップへということが、いつまで経っても起こらない。(文庫本で7行)

臨床とことば』第3章の2つ目の見出しは「ボーダレス化した大人と子ども」です。
昔は「観念」ではなく、体の感覚を伴う「儀礼」を経ることで、以後「大人」として扱われるという制度、すなわち「イニシエーション=通過儀礼」が存在していました。
鷲田さんが言うように、河合さんは、「イニシエーションが存在した過去と現代」の違いについて、さまざま紐解いています。哲学者の鷲田さんも興味を覚えるテーマであるのか、ご自身の考えを開示しつつ、河合さんの見解を確認するような(質問ではなく)風情で語りが続けられます。

筆者はここで、「コーチング視点での気づき」を得ました。鷲田さんの「長い語り」の合間に挟まれる河合さんの言葉に注目です。
鷲田さんの言葉(冒頭の引用から)の行数のみと、河合さんの反応を並べてみます。

(鷲田)7行
(河合)ない、ない。
(鷲田)7行
(河合)うん、うん。
(鷲田)4行
(河合)ほう、ほう。
(鷲田)4行
(河合)面白いね。
(鷲田)2行
(河合)そうです、そうです。よくわかりますよね。

鷲田さんは何を語っているのか…
以前、大学院の学生(22~26歳)13人に「自分を大人だと思う人?」と質問したら、「たぶん」と答える1人を除いて、12人は「自分はまだ子ども」だと思うと答えた。このことを香山リカさんに話したところ、ある高校で「自分は若くないと思う人」と、逆に聞いたら、ほとんどの子がハーイと元気よく手を挙げた、と言う。論理的に矛盾しているのだが、この矛盾が併存している… といった内容です。

筆者はこの間の対話は、まさにコーチング(鷲田さんとの対話はカウンセリングではまったくありませんから)であると捉えます。河合さんの相づちによって、鷲田さんは、「ノって」「気持ちよく」ご自身の考えを開示されています(笑)
そして、河合さんはおもむろに…

上記の続きを逐語で引用します。

(鷲田)
香山さんは高校生、私は大学院生に問いかけたんですけど、そのあとじっくり自分自身のことを考えて、はたして自分は大人だったのかな? と。
(河合)
だから、高校生のところに行って……。
(鷲田)
「もう自分は若くないと思う人?」って聞いたんです。
(河合)
たくさん手を挙げたでしょう。
(鷲田)
はい、はい。
(河合)
今度は、50歳ぐらいの経営者のところへ行って「私はまだ若いと思う人?」と聞いたら、またバーッと手が挙がりますよ(笑)。
(鷲田)
年寄りと子どもの精神年齢が逆になっているんですね(笑)。
(河合)
そう、そう。実際にそう思いませんか。
(鷲田)
経営者だったら、そう言うでしょうね。というか、願望も含めまして。
(河合)
含めて、ちゃんと挙げると思います。
(鷲田)
幸福をイメージできないということと、若い間に、ほとんど10代でもうすんでしまったような感覚をもつということとはどう……。

鷲田さんは、「矛盾」についての納得できる「解」を掴みあぐねています。実は河合さんは、鷲田さんがイニシエーションを話題にした瞬間から、鷲田さんの疑問に対する「解」は、心の中で用意できていました。ただ、すぐには言葉にしていない。

今回の「コーチング解説」は、その河合さんの「解答」を引用して(「あっ、」と鷲田さんが反応するところまでを)、終えることにします。

(河合)
僕の考えでは、一人の人間は自分の中に老若男女ほぼすべてを持っている。可能性としても、皆持っている。けれども、その中の「あなたはこれを」「あなたはこれを」というふうにちゃんと決めてもらうと、社会の秩序はきれいに成立するでしょう? 昔はそっちのほうの観点が強かったから、だから皆箱に入れられていったわけですね。「あなたは大人です」と。その大人に入れる方策がうまかったわけですよね。実際にイニシエーションの儀式があり、こうこうこうですと。そうすると、昔は子どもからいったん大人になると、子どもには戻れない。
(鷲田)
あっ、逆に……。


コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。

This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.

認定コーチ紹介サービス
ホームページ制作サービス
Certified Coach Referral Service
Web Site Creation Service