前回まで「境界」と「領域」の関係を語ってきました。主旨は、二分法ではなく、幅のある「領域」の視点でアプローチしています。
さて、コーチングを学ぶ過程で、ティーチングとコーチングの関係をどう捉えるか… 多くのコーチが悩みます。コーチングの学習プロセスにおいて、両者をあいまいなままにしておくわけにはいかないので、基本的にコーチングとティーチングは異なる分野であるとして捉えます。ただし… ティーチングを表意文字である日本語の「教育」として、意味を考えてみると、語感から伝わってくる「ティーチング」よりも深く、幅を有する「領域」としての概念に拡がっていきます。
今回は、河合隼雄さんの『<心理療法コレクションⅣ>心理療法序説』にある、「教育をどう考えるか?」を援用してみましょう。次の言葉から始まります。
教育という文字は、教と育に分解することができる。それに、「育」という文字は、自動詞にも他動詞にも用いられる。
教える。
育てる。
育つ。
と並べてみると、教育ということのもつ深さが端的に示されているように感じられる。学校ではいろいろなことを「教え」ねばならない。しかし、それを可能にするためには、子どもがある水準にまで「育って」いることが必要である。教えることに焦りすぎても、子どもがそれを受け入れられないときは無意味になってしまう。(85ページ)
CBLコーチング情報局では、コーチングが成立する前提として、「受容」と「共感」をまず挙げています。これはコーチ、クライアントの相互にそのことが形成されている、ということです。河合さんの「子どもがそれを受け入れられないときは無意味になってしまう」、と語りますから、早々にコーチングと教育の「領域」は、オーバーラップしていることに気づかされます。
河合さんは、自動詞の「育つ」にフォーカスし、「待つ」ことの大切さを述べます。
…その本人の潜在的可能性が育ってくるのを待つ、という態度が、教育現場においても極めて重要になることが理解されるであろう。事実、学校において「問題児」と呼ばれる子どもに筆者も数多く会ってきたし、多くの心理療法家が面接し、効果をあげてきている。極端な場合には、来談した子の話を黙って聴いているだけでよくなってゆく。あるいは遊戯療法の場合であれば、文字どおり遊ぶだけである。ただ、話しを聴いたり、遊んだりするときの心理療法家の根本的態度によって状態が変化するのであり、それは通常の雑談や、遊びとは次元を異にするのである。(86ページ)
このパラグラフの最後、「通常の雑談や、遊びとは次元を異にするのである」を、どう受けとめたでしょうか?
「じゃあ、聞いてあげればいいのね、一緒に遊んであげればいいのね」とは異なります。その前に「根本的態度」とあるように、専門職である心理療法家のプロフェッショナル性を語っているのですね。
「問題児」とされる子どもは、俗にいう「普通の子」よりも敏感です。「聞いてあげている教師の表面的態度」はすぐに見抜かれます。コーチも同様です。実践を積み重ね、コーチングの意義を深く理解しているコーチは、クライアントを全面的に受容し、クライアントの「鏡」となって自然体で接することができるプロフェッショナルです。
今回は、ここまでとしておきましょう。次回は、さらに「教育」について語りを進めていくことにします。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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