（鷲田）
暴走族もそうですか。
（河合）
あれは命をかけているわけです。どこかに命をかけないと儀式にならないんですよ。だから、若者は何とかして命がけのことをやるわけですね。何でも流行ってしまったら儀式の意味がなくなります。だから、最初の援助交際なんかでもそうですよね。それと同じことですよ。「何が悪い。私の体やないか」と言います。つまり、「私の物だ。私が痛めつけてどこが悪い」という。それは耳に穴を開けるのも一緒です。
『臨床とことば』第3章の3つ目の見出しは「現代社会の成人儀礼」です。前回まで、2つ目の見出し「ボーダレス化した大人と子ども」を複数回取り上げました。
昔は、イニシエーション（通過儀礼）が社会の規範（慣習としての）として成り立っていた。ところが、それが存在しなくなった現代は、「大人」と「子ども」の区別を自覚させる社会的枠組みも消失してしまい、「内面的自由度」が与えられた反面、混乱は必然的に生じてしまう、という主旨です。
社会が用意してくれた「本当の」イニシエーションはなくなったが、現代の若者は、「本当の儀式がないから、皆それなりに下手な儀式を模索している」と、河合さんは論を展開します。
この箇所に触れた時、昔読んだ『蛇にピアス』を思い出しました。2004年の芥川賞受賞作品です。同年は、同時受賞の『蹴りたい背中』の綿矢りささんが19歳11カ月、金原ひとみさんが20歳5カ月という、丸山健ニ氏の23歳0カ月を更新したことで話題になっています。
さて、「下手な儀式」をどう受けとめたらよいのか… 冒頭の引用に続く河合さんの言葉です。
要するに、本当の儀式がないから、皆それなりに下手な儀式を模索するわけですね。そのときに、儀式としての自覚は、もちろん皆ないんです。ただ、それをやらざるをえないのです。だから、そういうふうな人たちに会って、本当の心の儀式をやってもらうのが、僕らの仕事みたいなものですよね。
（鷲田）
その場合の本当の儀式というのは、先生、具体的にどういうものでしょうか。
（河合）
それは本当に心の中でピタッとわかったら。「あっそうだ」とわかったら、そんなことしなくてもいいわけですよ。
（鷲田）
なるほど。それが目的ですものね。
この後、ユング派心理学者の河合さんは「夢の意義」を語ります。
（河合）
だから、「そうだったのか！」ということがわかったら、あんなばかなことする必要はないですね。もう一つは、僕らは夢を見るから、夢の中で儀式が起こりますよ。夢の中で死ぬ人がいますけれどもね。それから、夢の中で父を殺すとか母を殺すとか。
（鷲田）
殺すことで自分が生き直すという。
「CBLコーチング情報局」では、昨年の７月20日に「ユングが語り、河合隼雄さんが紐解く“夢”とは？」というタイトルで、河合さんの学術書である『＜心理療法コレクションⅠ＞ユング心理学入門』を取り上げています。
「現代社会の成人儀礼」を「夢分析」の視点で解説する、上記に続く河合さんの言葉を引用し、今回のコーチング解説を終えることにします。
（河合）
つまり、夢の中では昔からの儀式がいろいろできるんですよ。それを、その人は「何でこんな夢を見たんだろう」と言う。「それは昔からちゃんとこういうのがあるんですよ」と話すと、すごくびっくりするわけですよ。それは非常に面白くて、まさに夢の中で歯がポーンと折れた夢とか見るでしょう？ これは成人式で歯を折るんやというような話をしたら、へぇーっというようなものですよ。
だから、今、個人主義の世の中ということで社会全体としての儀式はなくなっている。ということは、楽になったように思うけど、個人に対する責任はものすごく重くなってくるでしょう？ そうすると、個人の皆が自前で儀式をやらなければならない。すごい時代ですよね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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