(河合)
『博士の愛した数式』(新潮文庫)を読ませていただきました。感激しましたよ、本当に。僕、もともと数学をやっていましたからね。
(小川)
数学科のご出身なんですね。
(河合)
ええ、だから余計に思いが深かったですね。それにね、映画版には若い数学の教師が出てくるでしょう。あれ見てたらね、自分が高校の教師してた頃を思い出してね。
(小川)
奈良育英学園で教えてらしたんですよね。
今回の解説より、『生きるとは、自分の物語をつくること』を引用しながら、コーチングの本質を考えてみようと思います。「何事も最初が肝心」との言い伝えがありますので、「何から文字を綴ろうか…」と、しばらく思案したのですが、まずは冒頭そのままを、引用することにしました。
同書は、小川さんが河合さんを先生として捉え、尊敬の念を込めてさまざまな質問を重ねます。では他方の河合さんは、どのようなスタンスで臨まれているのか… これまた同様に、小川さんのことを心から尊敬していることが伝わってきます。つまり「対等」な関係性です。こうしてお二人の「たましい」の響きあいがスタートしました。
コーチングが機能するには、クライアントとコーチの間にラポールが形成されることが、なにより大切です。小川さんと河合さんの間には、言葉を交わす以前から、「完全なラポール」が存在していますから、『生きるとは、自分の物語をつくること』は、そのままコーチングの本として読み通すことが出来ます。
さて、同書は5ページ~8ページごとに「見出し」が付されています。最初は「友情が生まれるとき」です。河合さんのキャリアのスタートは「高校の数学教師」です。小川さんの『博士の愛した数式』を読んで感激し、「数学」を究めようとした頃の「河合さんの想い」が呼び起こされます。
(小川)
私は今まで数がいかに美しいか全然知らずに生きてきました。ところが、ふとした偶然から、普通の人が花が美しいとか星が綺麗だということで感動するように、数学者は数の世界の美しさに感動するんだと知りまして……。
(河合)
その通りなんです。
(小川)
本当に情熱を持って研究なさっているんだということが、自分にとって大変な価値観の転換でした。
(河合)
だから、数学者は美的センスがなくっちゃだめなんです。僕はそれがなかったんで(笑)。いや、ホンマ、それで辞めたんです。数学はね、科学の女王と言われるんですよ。僕もチラッとは女王を見たんやけど、これはダメやと思ってね。それで糟糠の妻、臨床心理学という方に……。
河合さんは、ここで冗談を交え、「さらり」と言葉にされていますが、河合さんのことですから「数学者」として歩み始めると、その高みに向かって、懸命に努力されたのだと思います。ただ、学べば学ぶほど、自分にその才の無さ(自己理想が高すぎた故?)を痛感されたのではないでしょうか。そして、30歳の頃、「臨床心理学」の学徒としての河合さんの第二の人生がスタートします。河合さんは、折に触れ、「自己実現」を本気で“実現”しようとすると、そこには「危険と苦しみ」を伴う、と語ります。
『生きるとは、自分の物語をつくること』の最初の見出しである「友情が生まれるとき」の最後当たりで交わされる対話を引用し、初回の解説を終えることにしましょう。まさにコーチングの本質にも通じる語り合いです。
(小川)
私、先生のご本の中で印象深かったことがあるんです。京都の国立博物館の文化財を修繕する係の方が、例えば布の修理をする時に、後から新しい布を足す場合、その新しい布が古い布より強いと却って傷つけることになる。修繕するものとされるものの力関係に差があるといけないとおっしゃっているんです。
(河合)
そうです。それは非常に大事なことで、だいたい人の助けに行く人はね、強い人が多いんです。
(小川)
使命感に燃えてね。
(河合)
そうするとね、助けられる方はたまったもんじゃないんです。そういう時にスッと相手と同じ力になるというのは、やっぱり専門的に訓練されていないと無理ですね。我々のように仕事は、どんな人が来られても、その人と同じ強さでこっちも座ってなきゃいかんわけですよ。年寄りの方もいれば子供もいる。いろんな人が来られますからね。
(小川)
そのお話を読んで、私、博士があんなふうにいい先生である理由というのもそこなんだと思ったんです。つまり、ルート君の持ってるか弱さ、淋しさにスーッと近づいていける、そういう才能を持っている。
(河合)
そうですね。しかし、そういう面白い人物像をよく考えつかれましたね。数の面白さもよく書かれていますが、ああいう人物像が出てきたのは素晴らしいと思いました。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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