一度きりの予定であった会話を、もう少し時間をかけて幾度か積み重ね、最終的に本にまとめてみたらどうだろう、との案が出たのがどのようないきさつからであったのか、今では判然としていません。しかし、最初の対談のおり、「ではそろそろこのあたりで……」とピリオドが打たれた時、よほど私が心残りな素振りをしたに違いありません。それを見逃さなかった編集者が、チャンスを広げる提案をしてくれたのでしょう。結局、先生の快諾を得て、映画の推薦メッセージからはじまったご縁は更に引き続いてゆくことになったのでした。
『生きるとは、自分の物語をつくること』は、第Ⅰ部「魂のあるところ」、第Ⅱ部「生きるとは、自分の物語を語ること（同書のタイトルと同じ）」、そして、前回から始めている「二人のルート～少し長すぎるあとがき」から構成されています。
冒頭の引用は、本来は、「週刊新潮」の中の一企画であったのが（第Ⅰ部）、第Ⅱ部も含めた「本」になっていく「ご縁」が書かれているところです。
「CBLコーチング情報局」で、最初に第Ⅰ部を取り上げたのは、3月29日です。「河合隼雄さんの“人生の物語”をじっくり味わってみようと思います」とタイトルを付し、スタートしています。その前日の28日には、河合さん著作の『大人の友情』を取り上げてきた最終回と、同書がつながっていく理由を描いています。
コーチングには、「振り返り」である「エバリュエーション」が求められます。コーチとクライアントの感じ方にズレが生じないよう、またズレを感じた場合は、軌道修正していくことが目的です。
同書の第Ⅲ部とも言える、30ページの「二人のルート～少し長すぎるあとがき」は、小川さんによる「振り返り」であり、「エバリュエーション」です。ただし、お相手の河合さんは、第Ⅱ部の対話の後、亡くなられます。したがって、小川さんお一人での「振り返り」です。河合さんの心の想いと、自身が受けとめた心の言葉に「ズレがなかったかどうか…」を、必死に、懸命に検証している小川さんの姿が伝わってきました。
心を込め合った対話は「物語」を生み出します。ただし、「心のつぶやき」は、それが綴られないことには、「物語」として、私たちは感じることができません。「日本の現役女性作家では、作品が世界で最も多く翻訳されている（Wikipedia）」とも称される小川さんは、河合さんのすべてを受けとめ、「新たな物語」を生み出します。感受した筆者は、その一つの物語を4月18日に綴ってみました。
二十代の半ばでデビューし、折々のインタビューの際、「なぜ小説を書くのですか」と質問されるのが苦痛であったことを、小川さんは告白しています。「書くことの意味を明確にイメージできないでいる自分の未熟さがさらけ出されるようで、怖かった」と、語ります。そのような頃、小川さんは河合さんの著作と出会い、「物語」の解釈に触れます。
今回の解説は、小川さんが「混沌」から脱することが出来た「気づき」について語るところを引用し、終えることにします。
……表面的な部分は理性によって強化できるが、内面の深いところにある混沌は論理的な言語では表現できない。それを表出させ、表層の意識とつなげて心を一つ全体とし、更に他人ともつながっていく、そのために必要なのが物語である。物語に託せば、言葉にできない混沌を言葉にする、という不条理が可能になる。生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げてゆくことに他ならない。
こうした意味合いの解釈に触れた時、私は初めて、書くことの意味が何の無理もなくスムーズに心の中心へと染み込んでゆくのを感じました。それまで論理とも言えない乏しい論理をかき集めてどうにかこうにか保っていた虚勢の鎧を、河合先生が放つ光はいともたやすくすり抜け、持て余していた私自身の混沌に、新たな方向を指し示して下さったのです。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.
