……ですから。これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』を読み込みながら、コーチングの解説を続けています。その第2章34ページには、宮沢賢治の作品が9つほど取り上げられています。そしてこの度、コーチング解説を書くにあたって、これらの宮沢賢治作品を再読しています。
初読の際は、「童話作家との評価が定着しているけれど、難解だなあ…」という印象でした。そして、改めて読み直すと……やっぱり難解です(笑)。
引用は、宮沢賢治の生前に唯一刊行(大正12年12月20日)された童話集の『注文の多い料理店』の「序」で、賢治自身が読者に語っている内容の一部です。新潮文庫版の童話集『注文の多い料理店』から引用しました。
「なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです」と、賢治自身が言葉にしていますから、「わからなくてもいいんだ…」と、胸をなでおろしています。
新潮文庫版の最後に、宮沢賢治研究者の天沢退二郎さんが「収録作品について」を寄せています。大正13年に同書が発行された際、広告ちらしをつくり宣伝されていたことが書かれています。
「……その広告ちらしに掲載された次の文章は、まちがいなく賢治自身の執筆とみられ、重要な文献なので全文を引用しておく」というコメントの後、2ページ半にわたってその宣伝文が紹介されているのですね。その内容は、まさに賢治自身が語る創作秘話です。一部を引用します。
この童話集の一列は作者の心象スケッチの一部である。それは少年少女期の終り頃から、アドレッセンス中葉に対する一つの文学としての形式をとってゐる。この見地からその特色を数へるならば、次の諸点に帰する。
と、4つほど列挙しています。その3つ目を引用します。
これらは決して偽でも仮空でも窃盗でもない。
多少の再度の内省と分析とはあっても、たしかにこの通りその時の心象の中に現れたものである。故にそれは、どんなに馬鹿げてゐても、難解でも必ず心の深部に於いて万人の共通である。卑怯な成人たちに畢竟不可解な丈である。
ユングの「普遍的無意識」を宮沢賢治は語っている、と筆者は受けとめました。そして賢治は、頭の固い価値観に縛られた(卑怯な?)大人には理解できないと、堂々と主張しています(笑)。
「アドレッセンス中葉」の意味がわからなかったので、グーグルで調べてみました。
アドレッセンス中葉とは、思春期や青年期のなかごろを指します。アドレッセンスとは、思春期や青年期を意味する言葉です。青年期は、児童期から成人期への過渡期で、身体的発達や性的発達、心理的変化などが著しくみられます。
村上春樹さんは、「自分がつくるキャラクターが何を考えているかよくわからない」と言葉にします。物語を紡いでいるうちに、「無意識の底から何ものかが浮上してくる」ということのようです。宮沢賢治と春樹さんに何か共通するものを筆者は感じています。
さて、ここからコーチングにつなげてみましょう。
ネットで宮沢作品を検索すると、膨大な数の書評・感想が現れます。中には「なるほど…」と感銘を受ける内容もあります。ただ多くは、「道徳的な視点に立って解釈しているなあ…」との印象を受けるのですね。その人(大人)の価値観が濃厚に伝わってきます。
書き物のなかで特に小説は、作者の手を離れてしまえば、その解釈は読者に委ねられることになるわけですから、それもよしでしょう。ただし、コーチングセッションにおいて、クライアントの言葉に対するコーチの解釈は、「極めて慎重」であることが求められます。
コーチングの「傾聴」は、文字通り「十の目と心によって」相手のすべてを感じることです。「頭で」というより「体感」していく、と表現できるかもしれません。
そして「受容」は、「相手のことはわからない」というところから出発します。評価ではなく、判断ではなく、ニュートラルな心持で、相手の“存在”そのものを受容するのです。
「宮沢賢治の作品をどう読むか」について、筆者が感じているコーチングとの関りを今回紐解いてみました。宮沢作品は実に深淵ですね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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