ゲシュタルト療法の「ホット・シート」「エンプティ・チェア」とは?

ゲシュタルト療法―その理論と実際』の中に次のような一節があります。

ゲシュタルト療法のワークをするために、私には六つの小道具が必要なのである。それらは、私のセラピストとしての技量、ホット・シートと呼ばれる椅子、そしてエンプティ・チェアと呼ばれる空の椅子、これは自己のものとして所有していない部分を演じたり、人生脚本を理解するのに必要な人物を座らせるために用いられる。それから、ティッシュペーパー、たばこ、灰皿である。(140ページ)

パールズが生きた時代は、タバコを吸う人の方がメジャーでした。現代では、たばこと灰皿は不要だということを補足しておきましょう。

さて、今回のキーワード解説は、「ホット・シート」と「エンプティ・チェア」です。
これは、ゲシュタルト療法のワークで用いられる技法で、クライアントに2つの椅子(ホット・シートとエンプティ・チェア)の間を行き来してもらい、自分に何かを伝えたい場合に、別の自分になって自分と対話していくのです。

『ゲシュタルト療法―その理論と実際』では実際のワークが紹介されています。

「では、私と一緒にワークするために、ホット・シートに座ってみたい方はいませんか。(ドンが前に出てくる。顎ひげを生やした40歳ぐらいの男性。美術の教師)」…

後半部分を引用します(142ページ)。

(パールズ)
では、このエンプティ・チェアをドンに見立てて、そしてその質問をその椅子のドンにして尋ねてみてください。
(ドン)
ドン、どうして君は、他人や君自身を引っ張りたいの。
(パールズ)
はい、今度は、元の椅子に戻ってください。そして、二人の間で、どんな会話がなされるのか、あなたの筋書きどおりに脚本を書き始めてください。
(ドン)
えーと、ドン、君の今の姿は、良いとはとても言えないので、胸を張らなくてはいけないんだ。
(もう一人のドン)
そうなんだ! その可能性があるな。胸を張ってみないと、自分の隠されている可能性が何なのか、分からないんだ。そうだ、僕は胸を張るべきなんだ。
(ドン)
なるほど、答えを得たみたいだね。答えを見つけたんだから、それを実行しさえすればよいのだ。
(もう一人のドン)
そう。いつか実行しようと思う。ぼくは実行しさえすればよいことくらいは分かっているんだ。でも、いつも実行しないんだ。

ここでパールズは、一旦止めてフィードバックします。トップ・ドッグ(勝ち犬)と、アンダー・ドッグ(負け犬)についての解説です。

(パールズ)
…勝ち犬というのは「正当づけ」です。ときに、それは正しさを示すこともありますが、正当づけです。この勝ち犬は、自分が正しいということを示すために、当然のことのように彼に胸を張るべきだと告げるのです。勝ち犬はいつも、「お前は~すべきだ」、そして、「そうしなかったらそのときは~」と威すのです。しかしながら、勝ち犬は見事なくらい単刀直入なのです。
一方、負け犬は、「はい」とか、「約束する」「賛成する」とか、「いつか、そのうちに」「できれば」と言うのです。ですから、負け犬は、欲求不満を起こさせる名人です。勝ち犬は、もちろんそうはさせまいとし、鞭打つわけです。そこで自虐的になって喜ぶゲーム、あるいは自己改善に励むゲームなどと名付けられるものが始まり、それは何年にも渡って、しかも年がら年中続けられることになるのです、でも、変化とか効果は何も起きないのです。そうでしょう?

ここでのパールズの最後の言葉である「でも、変化とか効果は何も起こらないのです」は強烈ですね。ゲームをやっているに過ぎない、と指摘します。
パールズはアドラーの影響を受けていますから、父性原理に立脚しているとも解釈できるのですが、同時にロジャーズの影響も受けています。パールズはグループセッション、つまりロジャーズの「エンカウンター・グループ」を重視し、有機体であるグループの力によって、クライアントがゲシュタルトを作っていくことに注力するのです。

今回のキーワード解説はここまでとしておきましょう。次回は、この「一人二役」のセッションがどのように展開していくのか、グループセッションに移行する流れを描いてみることにします。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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