(鷲田)
「そのときにしゃべっていることばは、聴くほうからか、話すほうからか、どっちがしゃべっているのかわからないことばにだんだんなっていく」と、前の対談のときに教えていただきました。哲学カフェをやっていて面白いなと思うのは、最初は自分の体験を吐露した人の話を中心にやっていたつもりが、皆が一応冷静に「そういう前提だったら、こういうことになりますね」とかやっているうちに、だれがしゃべったか、だれの話をだれがしているのかわからないような感じになってきたとき。そういうときはディスカッションがうまくいくんです。
(河合)
なるほど。
河合さんは心理療法家(カウンセラー)ですから、治療契約に基づくクライアントとの「一対一の対話」がベースです。一方で、「哲学カフェはグループ・ディスカッション」であり、異なります。ところが、河合さんが話されたことは、異なる環境においても「共通する原則」として成立している、と鷲田さんは指摘したのです。
「臨床心理学は客観化・普遍化(学問の基本です)が難しい」と捉えていた河合さんは、鷲田さんのこの言葉に、強く啓発されたのではないでしょうか。
(鷲田)
それが聴き役と、私はこんなきつい体験をしていてと話す人と、役柄が最後まで続いているときというのは、うまくディスカッションがいかないんですね。
(河合)
ああ、そうですか。それは面白いね。
哲学議論は「答えが出ないときのほうが気持ちがいい」と鷲田さんは言います。哲学がテーマの「哲学カフェ」に参加した人たちが満足感を覚える状況を説明する鷲田さんに、河合さんは興味を惹かれます。前回、鷲田さんに切り込んでいた河合さんが、「聴き役」となり、攻守逆転しました(笑)
6月13日にアップした「共感疲労」に陥らないための「距離感」とは?で筆者は次のようにコメントしました。
ここまでの対話でのお二人の姿は、河合さんは「臨床>学問」であり、鷲田さんは「臨床<学問」でした。近づいていたものの「距離」がありました。ところが、127ページの見出しである「人と人の距離感をどうとるか」からの語り合いは、お二人の「距離がぐっと近づいた」ことが如実に伝わってくるのです。
その「分野が異なるお二人の間の距離感が“一気に”縮まった」シーンを今回描いています。
「哲学カフェ」を“臨床”の実践として捉えていた鷲田さんは、「臨床家のプロフェッショナルである河合さんは、その“臨床”を理解し受けとめてくれるのか…」と、不安を覚えていたのだと思います。ですから鷲田さんは、その実践内容を真剣に語った。河合さんの以前の話に共感したことを織り込んで…
お二人の対話の続きです。
(鷲田)
そうすると、最後まで役柄が決まっているときには「結局、今日は結論が出なかった」ということになってしまうんですが、皆がだれの問題だったかわからないように、だれがこのことを言ったのかわからないようになってくると、面白いことに不満が出ない。哲学の議論ですから、「生きる意味があるか」とか、そんなものに結論が出てくるはずはありませんしね。人間には答えを出せない。なのに、そういうときは「今日の話は結論がない」という不満が出ないんです。
(河合)
何か皆で納得する訳ですか。
(鷲田)
「何かよかったあ」と言って。司会者はいっさい内容的なリードをしないで、皆の話し合いに任せて交通整理しかしない。司会者は大学院生にやらせるんですけれども、真面目な学生は一生懸命「今日の話はこうで、こういう問題が出てきて」と、まとめようとするんですね。そうしないと皆に悪いと思ってしまうんです。けれどもそういう場合も、参加している人が「そんな無理にまとめんでいい」と言ってくださるんですよ。……
鷲田さんは、この後も「哲学カフェ」の“臨床”を語ります。河合さんが「思わず」声を発する最後のシーンを引用し、今回のコーチング解説を終えることにします。
……治療における聴くということと、われわれがディスカッションするということは、ちょっと似ているかもしれませんね。
(河合)
いや、ちょっとどころじゃない。ほとんど同じだと思います。……
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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