「共感疲労」に陥らないための「距離感」とは?

(鷲田)
ケアとか看護といったシーンで、いちばん難しいけれどもいちばん大切なのが、「距離」でしょうか。密着しない。しかも離れすぎない「距離」……。
(河合)
それは本当にそうだと思います。
(鷲田)
看護師さんなんかでも、一生懸命な人ほど患者さんに密着するあまり、その気持ちに近づかなければならないという強迫から、いわゆる共感疲労になったり。
(河合)
それから、よくあるのが、恋愛と間違われて失敗してしまうケースですね。だからといって、突き放すこともできない。その人間と人間の距離感覚みたいなものが難しいですね。

臨床とことば』の第3章(2回目の対談)のタイトルは「臨床における“距離”」です。全部で8つの見出しが配されています。前回までで、うち3つの見出しの内容について「コーチング解説」を6回試みています。今回は4つ目の見出し「人と人の距離感をどう取るか」を取り上げます。

『臨床とことば』は、お二人の対談本であり「単著」ではありませんから、「章立て」や「見出し」は、編集者によって構成されたのではないか、と筆者は推測しています。編集者は、第3章全体の「肝」は、ここで交わされる「距離感」だと判断したのでしょう。全体テーマとこの4番目の見出しがリンクしている理由を、筆者はそのあたり見出しています。少し前置きが長くなってしまいました。

ここでの語り合いは、お二人にケミストリーが生じていることが如実に伝わってきます。分野を異にする巨人が相まみえたとき、巨人とはいえ、一人で思索していたなら、決して生まれなかっただろう「思念」の数々が、次々と「言語化」されていくのです。

生涯にわたって「臨床」の大切さを訴え、実践し、ともすれば「臨床」は「学問」とは距離がある(普遍的でない)と、アカデミズムが捉えている実情(上から目線?)に対して、「そうではない、普遍性・客観性は見出せる…」と、「臨床と学問の融合」にチャレンジし続けてきた臨床心理“学者”の河合隼雄さんが、一方で「学問」のベースと認識される「哲学」について、日本の哲“学者”の泰斗である鷲田清一さんが、「臨床」を実践しないことには、「哲学学」として、神棚に飾られたままの象牙の飾り物(筆者の表現です)となってしまう、との危機感から「臨床哲学」という新しい「学問」を創始していることを知り、対談を申し込んだことで、この『臨床とことば』は誕生しました。

ここまでの対話でのお二人の姿は、河合さんは「臨床>学問」であり、鷲田さんは「臨床<学問」でした。近づいていたものの「距離」が存在していました。ところが、この「人と人の距離感をどうとるか」の語り合いは、お二人の「距離がぐっと近づいた」ことが如実に伝わってくるのです。
「人と人の距離をどうとるか」は、127ページからスタートします。冒頭の引用が、その始まりです。お二人の距離が縮まってきた内容については、次回より「コーチング視点」で語ってみようと思います。

今回の最後に、第2章(初回の対談)の最初当たりで交わされた、お二人のスタンスが理解できる語り合い(50ページ)を振り返り、引用しておきましょう。

(鷲田)
ちょっと勇気づけられたんですけど、哲学ってある意味で、極端に普遍的なこと、例外なしにあらゆることに当てはまること、客観的なことを学問の基準にしています。でも臨床哲学なんて言って現場に行ったら、普遍的ではないことがいっぱい出てくる。そのときに、これでいいんだ、とジャコメッティに言ってもらったような気になって。
(河合)
僕なんか最初やり出したときには、さんざんに言われたんです。学問やない、とかね。
(鷲田)
でも科学自身がこれからそういうふうに変わるんじゃないか。
(河合)
ええ、変わるんじゃないかと思っているんですが、必要性は皆感じているわけですね。看護のこととか、すべてそうですよね。それは何も近代医学を全然否定していないんで、医学はどんどんやってください、それはそれでいいんです。でもそればっかりで全部やるのは無理だしおかしいと、そういう考え方でしょう。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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