文庫本で全253ページの『臨床とことば』を取り上げてのコーチング解説をスタートしたのは5月8日でした。今回が何回目なのか数えてみたところ、44回ほど解説を重ねています。
同書は、第1章（～26ページ）が河合隼雄さん、最終章+文庫本あとがき（185ページ～242ページ）が鷲田清一さんの単独の執筆。間に挟まれた第2章（27ページ～88ページ）と第3章（89ページ～184ページ）は「対談」という構成です。
その対談最後の見出しは「個から普遍に至る道（174ページ～184ページ）」であり、「臨床の個別性」は、実は「学問の前提となる普遍性」にもつながっている、というお二人の想いが語られる内容です（同書の「結論」と言ってもよいでしょう）。
そして、243ページからの「解説」は、医師で作家でもある鎌田實さんが書いています。その「解説のはじまり」は、5月14日のコーチング解説の最後で引用しています。再掲します。
臨床心理学と臨床哲学のそれぞれの雄ががっぷり四つに組んで、「臨床とことば」 について横綱相撲を見せる。立ち合いは激しい。西の正横綱の鷲田清一が、ぐっと東の正横綱・河合隼雄を土俵際に追い込んだかと思うと、河合隼雄はすっと身をかわして、土俵伝いをうまく回り込み、再び土俵の中央に戻る。なんとも見ごたえのある取り組みである。そうだ、そうなんだ、と納得し、感動しながら読んでいる僕は、臨床医である。……
筆者は、この鎌田さんの「感動」に文字通り「共感」しています（し続けています）。心理学者と哲学者の深い対話は、実はコーチングにもコミットしている（普遍性が存在する）ことが実感されるのです。同書を選んでコーチングを書き続けたことに「間違いはなかった」と確信しています。
さて、対談の最後の1ページを引用させていただきます。次回からは、最終章である臨床哲学者である鷲田さんの「想い」を読み込んでみようと思います。
（鷲田）
次の宿題が……。毎回、先生は宿題をくれはりますね。もう一つの普遍性について考えなさいと。
（河合）
そうですね。普遍性のそれを、もうちょっと。
（鷲田）
違う普遍性のイメージというものをもつということですね。
（河合）
僕は「個より普遍に至る道」と言っているんです。ふつうは普遍から普遍に至ると言いますけどね。
（鷲田）
なるほど。哲学もそういう語りができるんじゃないでしょうか。
（河合）
だんだん、だんだんそうなるのと違いますかね。そのほうが皆もまた聴くようになるでしょうしね。
（鷲田）
今のところは、徹底的にやっぱり同業者にはばかにされています。つまり、そういう臨床的な知と、そんな一例を取り上げてごじゃごじゃ面白く話をして、それで何になるんやと言うことをよく言われる。
（河合）
僕は、今から三〇年ほど前は、徹底的に同業者にばかにされてたんですよ。
（鷲田）
三〇年遅れで。もうちょっとばかにされつづけたいと。
（河合）
ばかにされつづけているうちに、そのうち退官（筆者注:文化庁長官）になりますけど。
（鷲田）
そのころベッドに寝ていて、もたれてもらっていて監視する。
（河合）
そういう人は今度、「文化高齢者」とかいうやつになりますよ（笑）。
（鷲田）
文化高齢者？ 先生、ミネルバのフクロウは人が寝ているときに起きてましたでしょう？
（河合）
それでいいですね。さっきの高齢者なんかミネルバのフクロウですよ。看護師さんが寝ているときにパチッと目を開けて……。
（鷲田）
だから、私もいじめられた果てに、三〇年後に無事、ミネルバのフクロウに、文化高齢者になると。わかりました。心して。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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