（河合）
ですから、わからないことがすごく多いんですけど、わからないけれど意味があるんですね。わからない、わからないと言っていると、わかるものがポンと出でくる。しかし、わからない時にずっと待っているということは、分析家がいないとできないんです。一人でやると、すぐ簡単にわかってしまうんです。わからないと不安ですからね。
（中沢）
焦ってしますしね。
（河合）
そうなんです。そうすると、これはあのことだとかいうふうにわかってしまう。われわれだったら、それはわかりませんねえということで置いてあげるから、だんだん形ができてくるんです。
引き続き『ブッダの夢』、第6章「汎神論風夢理論のこね方」の7番目の見出し「パイをこねるような夢の作業」の、お二人の対話を取り上げて、コーチングに敷衍しています。
前回（前々回）も読んでいただいた読者の方であれは、ここで、河合さんと中沢さんが言わんとすることは、何となく理解できると思います。ただ、そうではない読者の方は、「禅問答」のごとく「？」が点滅することでしょう。
河合さんは「夢分析」の第一人者であり、実際のカウンセリングでクライアントが見た夢について対話を重ねていると、起こりがちのパターンを紹介しています。
夢というのは、自分の頭脳がつくりだした物語ですが、すごい夢を見た時、どのように頭を働かせても（起きている時です）「絶対」創作できない奇天烈なストーリーが展開していることに「驚愕」することがありますよね。それが「夢の持つ力」です。河合さんは「夢とは創造力の源泉」であると言います。
ただし、人はわからないという状態がイヤなので（耐えられない…と表現してもよいでしょう）、適当につじつま合わせをして「わかってしまう」のです。河合さんはそのことを、少し禅問答をまぶして言葉にしています。つまり、河合さんのようなプロのカウンセラーとの対話がなかりせば、その人が自ら、本来持っている創造の芽を摘んでしまう、ということなのですね。
ここは、コーチングも同様です。私たちコーチは、クライアントが「わかってしまう」ことを、上手に回避してあげる「言葉」を提供することができるプロですから（笑）。
少し補足します。「起きている時は絶対創作できない」と、言い切ってしまいましたが、村上春樹さんは、起きている時でも無意識の地下二階まで降りることができるので、さまざまな村上ワールドを産み出すことができるのです。
河合さんは、多くの心理学者が賛同する「発達段階説」に疑義を投じます。中沢さんがチベット仏教の「段階」を紹介したことを受けてのことです。
（河合）
…… つまり、みんな段階と言うのは好きですから、フロイトにしても発達段階ということを言いますし、ユングもそれなりに言っているわけですが、なにかひとつのステップがあって、だんだんいわゆる自己実現なるものをしていくようなイメージをもつわけでしょ。けれども僕は、どうもそれはあやしいと思うんですよ。そんなものではないと。
中沢さんは、河合さんの誤解を解くように…
（中沢）
チベットの場合、グレードを踏んでいくのは技術の体系だけであって、すべては最初から完成されているものなんです。
（河合）
やはりそうなんですか。
中沢さんの「（人間は）すべては最初から完成されているんです」に共感します。それは「コーチング思考」ですから。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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