臨終の瞬間、離れた場所にいる私の耳に「じゃあな!」という父の声が聞こえた

父が「今夜がヤマだ」と医師に告げられた夜、私は〆切を抱えていたので、知人の通信社の人たちと、病院の近所で軽く一杯やり、「仮眠した後仕事するから」と、8時頃家に帰った。
深夜1時過ぎ、私は「猫巡回」と称して何があっても、10年以上ほぼ365日続けている“都市猫”の観察に出かける。自転車で1周20分、ふと今夜ばかりは「携帯を持って出るべきかな?」と思ったが、たかだか20分間「何があっても途中で切り上げる自分でもナシ!」と、携帯は置いて出た。……

吉本隆明さんの長女で漫画家のハルノ宵子さん執筆の『隆明だもの』は、32のエッセイと作家である次女の吉本ばななさんとの姉妹対談で構成されています。この「コーチング大百科」で7回ほど取り上げた姉妹トークの後、ハルノさんのエッセイを、いくつか順不同で紹介していますが、何ごとも「最初が肝心」ですから、今回は「じゃあな!」のタイトルが付されている初回のエッセイを取り上げることにします。

毎回のエッセイは3ページの分量です。その2ページ目の頭のところを引用してみました。タイトルが示唆するように、吉本隆明さんの臨終の際のエピソードがハルノさんの視点で描かます。

ちなみにこの最初のエッセイの始まりの1行はというと……「うちはどこかおかしいのかな?」と、思うことがある。……です。

「うちはどこかおかしいのかな?」と、思うことがある。長年両親の入院などで、毎日のように同じ大学病院に通っていると、病室の前にずらっと椅子を並べ、家族や親戚数人が座っている場面を見る。おそらく(たいがいの場合)ご老人が危篤との知らせを受け、親戚が詰めておられるのだろう。2、3日経つと全員が憔悴しきっている様子が見て取れる。

この日本では多くの人が病院で亡くなります。「危篤」はどのような判断でなされるのか…医学の知識を有する医者であっても、判断が難しい事象であることが理解できます。確かに3日もその時間が続くと、憔悴と共に「危篤です」と告知された瞬間の感情とは、また違った感覚が流れていくだろうことが想像されますね。

続くハルノさんの言葉を引用します。

失礼ながら、息を引きとる瞬間を「今か今か」と待っているようにしか見えない。最期は家族に手を握られ、号泣され名前を呼ばれながら旅立ちたい……というメンタルは、残念ながらうちの誰にもない。

いやはやアッパレな「断言」です。しかも、「うち」とあるように、自分だけでなく家族全員がそうであると言い切っている。生成AIとの協働制作で、1月7日に公開した<『隆明だもの』の書評を、生成AIとのコラボレーションでつくってみた!>の一節を再掲します。

2. ハルノ宵子の表現者としての“別格性”

吉本ばななさんが“物語の魔術師”だとすれば、 ハルノ宵子さんは“観察と記述の鬼”です。ばななさんは、感情の流れを物語化する、読者の心に寄り添う、「癒し」や「再生」を描く。一方で、ハルノ宵子さんは、感情を一切甘やかさない、事実を事実として突きつける、家族の“生々しさ”をそのまま書く、しかし残酷ではなく、むしろ透明。

冒頭に引用した続き「……」は、文章の流れから想像できますね。20分後に家に戻ると、病院からの着信が届いていました。

あわてて病院に駆けつけると、誰ひとりいない病室で、父は形式だけの酸素マスクを付けられ、点滴などはすべて外されていた。酸素のコボコボという音だけが病室に響いていた。
「あっちゃ~…やっちまった!」
でもこれでいいんだ。これまで、どんな大切な猫だって(人間と動物の区別ナシ!)、うっかり病院で死なせたり、路上で事故に遭い無残な姿で見つけたり……すべては運とタイミング。死の瞬間は誰だって一人だ。

ハルノさんは看護師さんに「何時頃でしたか?」と尋ねます。『隆明だもの』のスタートのエッセイは「じゃあな!」。その時刻は、「猫巡回」の際、“予感”めいた感覚に囚われた瞬間でした。最後の5行を引用し、今回を終えることにします。

「う~ん…1時25分頃でしたかねぇ」と、看護師さんは日常会話のように言って出て行った。正にあの交叉点を横切った時刻だった。
「じゃあな!」と、いつも通りに軽く手を振り去っていく父の声が聞こえた。もちろんその声は、韓国出張中の妹だって、同じ病院の同じ病棟に入院中の母だって聞いていただろう。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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