（河合）
やっぱり自然科学というのは、単純な分類をすると、父性でしょう。父親的な切る力がなかったらできないですからね。母親からも自立できるし、自分は物事をすっきりわかっているんだという、賢治という人は、日本人には珍しく、父性も非常に強かった人だと僕は思います。だから、論理性とか合理性とか、そういうものが強く出てきます。ところがそれで終わらない。
（中沢）
そこが大事なんですね。
（河合）
そうそう。
河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』の第2章のタイトル「宗教と科学は対立しない」は、8つの見出しで構成されています。1月22日の解説では、「バイアスに気づく」ことの重要性を語ってみました。その「気づき」につながるのが、コーチングの「リフレーミング」です。
引用は、宗教と科学を別な分野だと受けとめてしまう「普通の視点」を、お二人が「そうではない」と、この第2章のタイトルにつながる対話の入り口なのですね。その鍵が次の4番目の見出しである「『銀河鉄道の夜』の母性と父性」です。この「母性と父性」については、過去のコーチング大百科でも解説していますので、目を通してみてください。
河合さんは「父性は論理性とか合理性とか、そういうものが強く出てきます」と言います。そして賢治は、日本人に珍しく「父性も非常に強かった」と… ただ、「それで終わらない」という視点を受けて、中沢さんはユニークな言い回しで賢治を捉えます。
（中沢）
……だから論理の哲学に惹かれたりしていくわけですけども、賢治の科学は、そうじゃない。それは、やっぱりさっきの生命と関係していると思うんですけれども、生命から離れちゃう。超越しちゃう。で、自分はこんなにすっきりとした論理によって世界を理解できるんです、ってお母さんのほうを見下したりするんじゃなくて、もう一回母性の方へ折れ曲がるんですね。
「宮沢賢治はモザイクである」、と捉えます（筆者の表現です）。ここまで賢治の「複雑な性格」をお二人の視点、さらに賢治の著作について筆者なりの解釈を通じて、アプローチしてきました。賢治をクライアントにコーチングを展開しているイメージを抱きながら…
『銀河鉄道の夜』によって、この童話の主人公であるジョバンニとカムパネルラに賢治の姿を投影し、「賢治ってとってもセンチメンタルでナイーブな人…」と捉える解釈が、日本中に広がっているように感じられます。ところが…河合さんと中沢さんは違っています。リフレーミングしてくれます。
4番目の見出し「『銀河鉄道の夜』の母性と父性」の書きだしを引用して、次回につなげようと思います。
（河合）
そうです。科学を捨てて屈服するんじゃなくて、科学を持ったまま入ってくるんです。ここがすごいところなんですね。
論理的に合理的に判断して、いわゆるじめじめしたセンチメンタルな世界から脱出している。そしてまたもう一回帰っていく時には、非常に深いところへ入っていったんです。だから、母性の体験も非常に深いと言ってもいいと思うんですね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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