「友情」には様々な境界を超え得る“大いなる力”が存在する!

河合隼雄さんの最晩年のエッセイ集である『大人の友情』について、全12テーマ・46話を一つずつ取り上げ、コーチングを語ってまいりました。前回、最後のテーマである「境界を超える友情」の第1話(44話目)、「半歩の踏み込み」を終えていますので、残り2話となりました。「もうすぐ終わり…」となると、さまざまな感慨が湧いてきます。今回取り上げるのは、45話目の「島への手紙」です。

さて、このタイトルを目にしたとき、皆さんはどのようなストーリーを想像するでしょうか? まずは、その解答を開示することにします。それは… 文字通りタイトルそのままの「島“そのもの”」に出した手紙にまつわるお話しです。

今度は一転して、これまた途方もない境界破りの話である。鎌倉時代の名僧、明恵は生涯にわたって自分の夢を記録した『夢記(ゆめのき)』を残し、私はそれを通じて明恵の偉大さを知った。現代も明恵を尊崇する人は多く、川端康成はノーベル賞授賞式の講演で、明恵の和歌を引用している。

河合さんには、専門の臨床心理学に関する学術書だけでなく、世界の昔話や小説などを題材にした膨大な著作があります。ただ、改めて調べてみると、ある特定の人物のみに焦点を当て評論として著したのは、この明恵に関する1冊だけです(『明恵 夢を生きる/講談社+α文庫』)。河合さんの人生に最も影響を与えた人物は、明恵なのかもしれませんね。

明恵は月夜の晩に弟子と共に船に乗って、紀州の苅磨(かるま)の島に渡るが、その時の情景があまりにも美しく、このような自然に接する限り、いまさら、別に教典を読む必要もないと明恵が感じたと、彼の伝記に記されている。

日本人の多くはクリスチャンではありませんから、彼らの「信仰心」が、いかなる「感動」を伴うのか、なかなか実感できません。河合さんは、ご自身の学術書のなかで、「ヌミノース」に触れています。「CBLコーチング情報局」では解釈を少し広げ、次のように補記しています。

神が登場する宗教的体験に限らず、芸術を通しての名状しがたい感動、大自然に包まれ一体化したような多幸感、夢にも関わらず起きがけの強烈な現実感を伴った魂を揺さぶられるような情動、といった体験もヌミノースに含めて捉える向きもあります。

明恵の「感動」は、ヌミノース体験かもしれませんね。
さて、タイトルの「島」とは、この「苅磨の島」のことでした。

その島に宛てて一通の手紙を出すところが、明恵の面白いところである。島への手紙はなかなか長いものだが、一部を引用してみよう。

河合さんは、その一部を原文で紹介します。そして、テーマの「境界を超える友情」につなげます。

明恵にとっては、人も島も同じなのだ。彼は、この手紙のなかに次のようなことも書いている。実は桜の木の大木のもなつかしくて手紙を書こうと思ったが、そんなことをすると狂気と思われないかと気になって、やめていた。しかし、結局はそれを狂気と思うような人は友人になどせぬことにした、と。明恵の友情に対する考えがここによく示されている。それによって、彼は島へ手紙を書いたのだ。

この手紙は弟子に託されます。手紙を受け取った弟子は困りますよね(笑)。「どうすればよいのでしょうか?」と明恵に訊ねると、「苅磨の島に行き、栂尾の明恵坊からの手紙だと高らかに呼ばわって打ち捨てて帰って来なさい」と、明恵は言います。
河合さんは、「ここに明恵のユーモアが認められる。これ以上真剣になって踏み込むと、ほんとうの狂気の世界に入ってしまう」、と捉えます。ここまでが当該エッセイの前段です。

後半は、カリフォルニア州在住の友人である、ジロウ・リースさん(生粋のアメリカ人のようです)の逸話が語られます。河合さんの日本の友人がアメリカにしばらく滞在する、ということで、その友人をジロウさんに紹介します。ある日、ジロウさんが「今日は、僕の親友のところに遊びにいこう」と言い、車で一緒に出かけたのですが…

車はどんどん山に登ってゆくので、ジロウさんの親友は山小屋にでも住んでいるのか、と思っていると、山頂の松の大木のもとで車は停車した。「これが僕の友人です」と、ジロウさんが紹介してくれたのは、その立派な松の木であった。その松の木の下でジロウさんがたててくれたお茶を喫して、彼らは帰路に着いた。

河合さんは、「彼が日本文化に影響を受けているからだろう」と言う人も想定して、漫画の「ピーナッツ」に登場する、スヌーピーの兄弟であるスパイク(砂漠に一人で住んでいる)についても語りを進めます。彼の友人はサボテンです。
河合さんのこのエッセイに込めた意図が、最後に明かされました。異なる文化、そして、人間と他の存在との境界をも超え得る「友情」の“大いなる力”です。

「ピーナッツ」は、アメリカのみならず、世界中でひろく読まれている。漫画であるとはいえ、犬(といっても擬人化されている)とサボテンの友情は、世界中で認められているのだ。文化差というものがだんだんと超えられ、そのなかで、人間と他の存在との境界も超えられてゆく。友情の力というものは大したものだと思う。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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