怒気とでもいうべきものに下落してゆく「勇気」とは?

河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の36番目のタイトルは、「勇気にもハードとソフトがある」です。

わかりやすい勇気のハード面に対して、ソフトの勇気を紐解こうとする河合さんの思いは、エッセイの中間あたりで語られます。

「勇気」とは恐ろしいとか怖いとか感じることに立ち向かってゆくときに言われることである。一番わかりやすいのは、戦争のときに命を失うおそれがあるのにもかかわらず、突撃してゆくときなどであろう。それは見た目にもすぐわかる。しかし、そのような「突進力」は、勇気のハード面だけではなかろうか。やたらに突撃して死んでしまうだけの行為を「勇気」というのを、保留したくなってくるのは、それはハードだけで、ソフトが開発されていないからではなかろうか。

アジア太平洋戦争がはじまった時期に、多感な少年時代をすごした河合さんは、「死とは?」について、他の少年たちが軍国少年として、「死」を恐れない「ハードな勇気」を取り込めていくのに対し、河合さんは、どうしても、その勇気を自分が獲得できないことに、深く悩みます。そこに囚われてしまった河合さんを救ったのが9歳年上の長兄であったことを、以前の解説で取り上げています。
河合さんが生涯を通じて追い求めたテーマは、「死とは何か?」であり、そして「勇気」を徹底的に深掘りすることであった、ということが実感されます。

河合さんは、仕事の方にほとんど心を奪われていて、家庭のことを顧みることなどまったくといってよいほどなかった高齢の男性の例を紹介します。あるとき、子どもと妻にやり込められたこの男性は…

反省すると、自分は妻がいろいろと苦労してきたことに対して、当然のように思っていたが、これは心から感謝すべきことだ、などと思えてくる。ところが、礼を言おうとしても、口まで出てきている言葉を呑み込んでしまって、「有難う」とか、「よくやってくれるね」などということが言えないのである。

そして河合さんは、「ソフト」の解明に向かって記述をスタートさせます。

さて、問題解決のための「ソフト」であるが、それはどうなっているのか。まず、そのような行為に「勇気」が必要と認識したこと自体が、ソフトの開発の第一歩ではなかろうか。馬鹿げたことだがやらぬと仕方ない、と思っているのと、「勇気ある行為」と思うのとでは、取り組む姿勢が異なるであろう。それは、外見的にはやさしいことかもしれない。しかし内面における対決という点で、それは「恐ろしい」ことなのである。それは単に「妻に礼を言う」ということではなく、自分の今まで生きてきた人生観や世界観の改変をさえ迫ることなのである。そこに、内面の機構のあらたな開発、つまり、ソフトが必要になる。

このエッセイの最後のパラグラフは、レイモンド・チャンドラーの有名な言葉である「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」を彷彿とさせる、河合さん流の至言として伝わってきます。

勇気に支えられていない「優しさ」は、どうしても「弱さ」の方に近づいてゆく。このために、自分は男らしくて強いと思い込んでいる人のなかには、優しいことを恥と思い込んでいる人もある。しかし、以上述べてきたことから、優しさにも勇気が必要なこと、あるいは、勇気にもソフトとハードの両面があり、その両面をもっていない勇気は、怒気とでもいうべきものに下落してゆくと思われるのである。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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