前回は、河合隼雄さんの『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』の中の『ソウタと犬と』を取り上げました。日本の「母性社会」が象徴的に描かれた小説として河合さんは捉えています。今回は、フィリパ・ピアスの『まぼろしの小さい犬』と、クリスティーネ・ネストリンガ―の『あの年の春は早くきた』に触発された河合さんが、「孫」のタイトルで著した内容を紹介することにしましょう。
両方共に共通することは祖母の方が能動的、積極的であり、祖父はその言いつけによって動く……といっても、祖父は祖父の世界をちゃんともってはいるが……ような点である。たった二作のなかの老夫婦像から一般論を引き出すのではないが、この点について考えてみると、一般にこのような傾向は見られるのではないか、と思われる。(177ページ)
このように河合さんは、日本でも一般化できるだろう、という前提で語りを進めます。
男は一般にその職業に生きているので、職業から離れてしまったとき、家庭のなかではその「世界」のなかでイニシアチブを取りにくい。男にとっては本来の「仕事」がそこに見出せないのである。これに対して、女性にとっては、年老いても彼女の「世界」は連続して存続しているわけであるから、どうしても積極的、能動的に行動することになる。彼女にとって「仕事」はずっと継続されているわけである。(177ページ)
日本と比べて海外は「性役割」がそれほど分別されていないようにも想像しますが、「家庭内の“仕事”」については、世界もやはり女性が主体性をもって切り盛りしているようです。そして河合さんは、孫に対しての振る舞い方が、祖母と祖父で違っていることを捉えます。
このふたつの作品で、祖母の方が孫に対して現実の厳しさを教えるような態度で接するのに対して、祖父の方が孫の願いや理想などに対して理解をもって接する、という点も共通に見られるのも興味深い。夫婦というものは、知らず知らずのうちに相補的に行動する傾向があり、どちらかが一つの役割を持つと、他方はそれを補う役割をとりやすいので、このようなことがよく生じる。その際に、必ずしも祖母が厳しい役で、祖父が優しい役をするとは限らない、と思われる。しかし、職業をもっている間の男性は厳しさをもっていても、引退してしまって、特に孫に接するときは急に優しくなりすぎ、それを補う意味でも祖母の方が厳しくならざるを得ない、ということもよく起こっているようである。(177ページ)
このようなコメントに接すると、河合さんはユンギアンであることが伝わってきます。ユングの代表的な業績に「タイプ論」があります。
人間が持つ基本的態度を、まず外向・内向に分類し、そこに「思考と感情」、「感覚と直感」という対立する2軸を組み合わせて、人が持つ傾向を8つに類型化して捉えます。
この「タイプ論」の寄って立つ基盤は「相補性」です。河合さんは、折に触れてこの「相補性」を解説します。
加えて河合さんのスタンスは、西洋社会が「父性社会」であるのに対し、日本は「母性社会」であるという視点を、さまざまな社会現象に敷衍していきます。
この「孫」というテーマにおいて、河合さんは西洋社会と日本が共有できる一般論として語りを進めていましたが、最後になると、スイスのユング研究所で、キリスト教文化の根底にある「父性原理」を体感した河合さんの思考が浮かび上がってくるのも一興です。
もっとも、この祖父にしても祖母の言いなりにいつも動いている、というのではない。やや逃げ腰ながらも、自分の主張すべきことは妻に対してはっきりと言っている。このようなところは、既に述べたように日本の老人男性が妻にすっかり「とりこまれ」ているように見えるのとは異なっていると思われる。やはり、個対個の関係であることは、はっきり現れている。(179ページ)
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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