河合隼雄さんの『＜心理療法コレクションⅣ＞心理療法序説』の一節を紹介します。
深層心理学を創始したフロイトにしろユングにしろ、その理論構築の背景に、彼ら自身の自己分析の経験があることを見逃してはならない。後にエレンベルガーが「創造の病」と呼んだ、心の病をフロイトもユングも自ら経験し、それを克服してゆく過程において、彼らの理論をつくりあげたのである。
フロイトがフロイトの心を対象とし、ユングがユングの心を対象として分析をする。そのとき、両者共に心を層構造に分けて考えるのが自分たちにとって好都合と考え、その深い層に対して「無意識」と名づけたのである。
自分の通常の意識の状態は把握されている。しかし、自分の把握していない心的過程が存在すると考えると、自分の症状や生き方などを検討する際に好都合なのである。彼らにとって、自分自身のなかに「無意識」を発見したことが重要な意味をもつことになったのである。（64ページ）
CBLコーチング情報局を開設したのは昨年の8月30日でした。コーチングに関するさまざまなキーワード解説も、今回で228回となります。
その5回目に「無意識と意識の定義をおさえてみる」をテーマアップし、6回目に「フロイトの無意識とユングの無意識は何が違うのか？」で、層構造で図解した両者の無意識の違いを解説しています。
コーチングセッションで、これまで動きのないクライアントに「ある現象」が起こることで、自律的行動に目覚め、ゴールに向かって力強く歩みを開始する… これがコーチングの意義であり、私たちが大切にしたい関係性です。「ある現象」とは、無意識にとどまっていた“何か”が、意識として浮上してくることです。コーチングでは、それを「気づき」と捉えます。
続いて河合隼雄さんは、深層心理学の本質は「私の心理学」である、と持論を述べます。
以上のことを踏まえて、筆者は深層心理学の本質は「私の心理学」であると言っている。つまり、私が他人のことではなく私について研究する心理学なのである。ここで、「主観の心理学」という言い方をしないのは、一般に主観と言われていることよりも、ここで言う「私」は広いという認識があるからである。（65ページ）
この場合の普遍性と、自然科学の場合の普遍性とは異なることに注意しなくてはならない。自然科学の場合は、いわば「私」抜きの普遍性なので、それはその対象に対していつでも適用できるのである。しかし、深層心理学の場合は「私」から出発している。対象が深くなることと、それをできる限り客観的に見ようとする「目」の存在とによって、それは「私が私の心について役立つ普遍性をもつ」のであって、単純には他に「適用」できるものではない。それに、その報告はあくまでも個人の意識を通じてなされるので、その個人の在り方に影響されざるを得ないのである。（67ページ）
「私が私の心について役立つ普遍性をもつ」とは、真のプロコーチの姿そのものである、と感じられるメッセージです。そしてコーチングの3原則の一つに「個別対応」があります。河合さんの言葉は、まさにそのことと符合する内容であることが理解できますね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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