
前回の最後で…プラトンが言ってますでしょう、「清い正しい心」をもった人の思想は、自然と数学的になるって。…という中沢さんの言葉を引用しています。今回は、古代を語る中沢さんのその言葉から始めようと思います。
(中沢)
プラトンが言ってますでしょう、「清い正しい心」をもった人の思想は、自然と数学的になるって。どうも歴史家が言っているのとは反対に、古代と言いますか、アフリカ的段階と言いますか、そういう国家的なものの考え方に冒されていない社会では、かえって現代の人間が発達させようとしている思考法が、もっとのびのび生きていたんじゃないでしょうか。政治家はきっとその「清い正しい心」を持っていながら、数学から最も遠いところに行っちゃうんでしょう。……
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の最終章(6回目の対談)<大日如来の吐息…科学について>の2番目の見出し<砂漠のなかを「科学」という車で……>を取り上げる4回目です。
中沢さんの言い回しは、前衛的理論をまぶしますのでちょっと難解です(笑)。「アフリカ的段階」は、西欧哲学の巨人である「ヘーゲルの進歩史観」に対する「アンチ・テーゼ」です。吉本隆明さんが晩年に思考し続けたモチーフであり、薫陶を受けた中沢さんは共感とともに頻繁に言葉にします。
バリバリの理科系(京都大学の数学科)だった河合さんの「日本が誇るリベラルアーティストに変身していくヒストリー」…これが最初の見出しの内容です。この展開に中沢さんは刺激されたのでしょう。したがって2番目のこの内容は、「中沢さん自らによるリベラルアーツを語る“巻”」となっている(笑)。
中沢さんも河合さんと同じく、合理性とか科学性ということを深いレベルで研究したいと志し、「生物学」(東京大学)を専攻します。「物理学ではもうそんなに新しいことは出てこないんじゃないかと当たりをつけて…」というのが、その理由のようです。ところが、「生物学はその頃、生命の現象を何でもかんでもDNAの構造に還元して理解しようとする方向に、雪崩を打って突進していた時期(1970年頃)」であったことに中沢さんは、興味を失っていくのですね。リベラルアーツの目覚めです。曰く、「僕がやりたいのはオーストラリア・アボリジニがやっているような数学だったんです。」
この中沢さんの開眼については、前回の<オーストラリア・アボリジニは、現代数学の「群論」を実践していた!>で紹介しています。そこからの「道」は中沢さんの「自己実現の探求」(暗い森のなかに迷い込んでしまった…)そのものだったようです。
(中沢)
…… 砂漠の真ん中で、トカゲやカンガルーやコアラや、いろんな動物が人間のしていることを不思議そうにじっと見ているなかで、太陽に頭がこがされながらやる科学といいますか。宇宙の感覚のなかでやる科学といいますか。そんなことを考えていたから、僕は科学の研究で成功する道から、自然と脱落してしまいました。それがよかったのか悪かったのか、いまでもよくわかりませんが、とにかく僕は「別の科学」を探しているうちに、暗い森のなかに迷い込んでしまったのですね。
中沢さんの言語化能力はすごいですね。詩的です。「オリジナルな中沢学」の萌芽です。メタファーが現れます。「僕はサーキットじゃなくて、パリ=ダカール・ラリーみたいに、舗装もされていない砂漠を「科学」という車に乗って走りたかったんです」、と。
間近でお二人の対話をじっと聴いていた編集者も、中沢さんの言葉に感動したのでしょう。リアルな対談の場では「見出し」は挟まれません(当然ですが…笑)。本がつくられるにあたって「見出し」をひねり出すのは編集者の役割です(ものすごく大事な仕事です)。同本は、全部で53の見出しで構成されていますが、ここでの見出し<砂漠のなかを「科学」という車で……>を生み出した編集者は「悦」を覚えたと筆者は確信しています(笑)。
砂漠で「科学」という車を走らせる夢を見た中沢さんは、「生物学から違う学科」に転向します。それは「宗教学科」でした。その中沢さんは「独自の宗教人類学」を確立するのです。
ここから3ページにわたって語られる熱弁をすべて紹介したいところですが、今回は、これにて終わることにします。次の見出しは<量子論と曼荼羅を結ぶもの>です。
東京大学に入学した中沢さんは「物理学ではもうそんなに新しいことは出てこないんじゃないか」と当時考えたようですが、現在に至って、物理学の根底を覆すものすごい理論…すなわち「量子力学」が開花していますから(正確には“開花しつつある”ですね)、天才タイプの中沢さんも、その点では見通しが甘かった…のかもしれませんね(笑)。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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