河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の22番目のタイトルは、「自立は依存によって裏づけられている」です。
「自立」の反対の言葉は「依存」であることは言を俟たないところです。そして、「自立と依存のどちらが好ましいと思いますか?」と訊ねられると、「自立が人間として目指すべき態度です」と、多くの人が答えるでしょう。さて、河合さんは、この対立概念をどのように捉えているのでしょうか?
自立ということを依存と反対である、と単純に考え、依存をなくしてゆくことによって、自立を達成しようとするのは、間違ったやり方である。自立は十分な依存の裏打ちがあってこそ、そこから生まれてくるものである。子どもを甘やかすと、自立しなくなる、と思う人がある。確かに、子どもを甘やかすうちに、親の方がそこから離れられないと、子どもの自立を妨げることになる。このようなときは、実は親の自立ができていないので、甘えること、甘やかすことに対する免疫が十分にできていないのである。親が自立的であり、子どもに依存を許すと、子どもはそれを十分に味わった後は、勝手に自立してくれるのである。
河合さんが語るさまざまの言葉に接すると、その一つひとつが、滋味あふれる芳醇な味わいとして私たちの心に響いてきます。
世の中に氾濫する数多くの言葉には、なぜか必ずその「反対」の言葉が存在するようです。河合さんの多くの著作を読み進めていくと、その両者をつないでくれる一つの言葉が浮かび上がってきます。「相補性」です。これはユングが提示した概念なのですが、河合さんは、このエッセイでも感じられるように、ご自身の哲学として、思想として、確立させていったことが伝わってきます。
相補性とは、「ある現象」に対して、一見するとその「反対の現象」と感じられることでも、実は「両者は補い合っている」ということです。
河合さんは、「自立と依存」の関係を洞察したスイスでの体験を語ります。「ヨーロッパの人たちは日本人より自立的だから、親子の関係などは、日本よりはるかに薄いのだろう」と考えていたのですが…
ところが、実際にスイスに行ってみると、親子が離れて暮らしている場合、電話で話し合ったり、贈物をしたり、あるいは、時に会食したりする機会が日本人よりはるかに多いことに気づいて不思議に思ったことがある。これをよく観察して思ったことは、彼らは自立しているからこそ、よくつき合っているのだ、ということであった。つまり、つき合いの機会を多くすることによって、自立を破壊されるというおそれを感じていないのである。
このエッセイの最後のパラグラフを紹介して、今回の解説を終えることにします。
人生のなかには、一見対立しているように見えて、実はお互いに共存し、裏づけとなるようなものが、あんがい多いのではないか、と思われる。そのような目で自分の生き方を見てみると、必死になって排除しようとしていたものに価値があることがわかるのではなかろうか。その発見によって、生き方に厚みがでてくると思われる。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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