「じぶんの痛みを語ること」は、過酷な行為である

塞いでいるとき、打ちのめされているとき、陥没しているとき、その苦痛、苦悶について語るというのは、それじたいが痛いものである。痛いことは忘れたい、思い出したくもないし、また大事なことはそれがそのまま通じるかどうかこころもとないので、いやじぶんでもそれがわかっているか確信がもてないので、そうかんたんには口にできない。

前回まで、『臨床とことば』の第4章の3番目の見出し、「関心ということ」について、3回にわたって綴ってきました。今回から、4番目の見出しである「語りの手前で」について、語ってみようと思います。

鷲田さんは「関心」そのものは「言葉」をかけ合わなくても(語らなくても)、相互性が生まれることを「関心ということ」で紐解いています。冒頭は、“満を持して”との思いを告げるように「ここで、ようやっと、<語り>ということが問題になる」と鷲田さんが<語る>この「見出し」の書き出しを引用しました。

ただ、哲学者の<語り>口は、一筋縄ではいかないですね。そもそも「見出し」は「語りの手前で」ですから、いきなり<語り>は登場しません。<語る>前の精神状態に、まず着目します。語ろうと思っても、人がそのことばを呑み込んでしまうのはなぜか…

呑み込まれることばは、それがひとの前でこぼれ落ちてくるまでには、気の遠くなるような過程がある。その過程をくぐりぬけて、それがさらに痛みを加重するのであってもそれでも聴き取られなければならないのは、じぶんの痛みについて語るということが、その痛みへのじぶんのかかわりを変えようとしてはじめることだからだ。

人は過酷な状況に陥った際、それが「自分の不始末」が原因であったとしても、他責感情によってしのごうとするものです。本当は「自分の不始末」でも、それを「無意識の層」に閉じ込め、自覚することを拒むのです。フロイトは、その感情を「防衛機制」として整理しました。鷲田さんは、真の自覚(気づき…awareness)のためのプロセスを語っているようです。
「じぶんの痛みを語ること」は、過酷な行為であることが伝わってきます。自分そのものを変えることだから… そして「語る」ためには「聴いてくれる人」が必要です。

聴くということはしかし、とてつもなくむずかしい。語りは語りを求めるひとの前ではこぼれ落ちてこないものだからである。語りはそれをじっくり待つひとの前でかろうじて開かれる。

鷲田さんは、ここから「注意をもって聴く耳があって…」と、その「待つひと」を造形させていきます。真のプロコーチとまさに相似形です。以下を引用して、今回のコーチング解説を終えることにします。

じぶんがどんなことを言おうとも、そのままそれを受け入れてもらえるという確信、さらには語り出したことで発生してしまうかもしれないさまざまな問題にも最後までつきあってもらえるという確信がなければ、ひとはじぶんのもつれた想いについて語り出さないものだ。なぜか。語るということは、他人の前でじぶんが多重化すること、つまりは着地点が見えないままじぶんを不安定に漂わせるということであり、つまりみずからを無防備にする行為だからである。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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