フレデリック・テイラーは工場の機械工でした。その環境は…仕事が各人に委ねられており…というと好ましい印象と受けとめる向きもありそうですが、実態は放任状態で賃金も一律、結果として「組織的怠業」が常態化していました。
その中で目立った働きぶりを評価されたテイラーは職場の改善を依頼され、それが「テイラー・システム（科学的管理法）」として結実します。
特徴は「仕事の見える化」です。科学的なアプローチ（テイラーの自賛的表現）で、作業内容や工程を分析し、そしてマネジメント（管理）を導入します。効率性という視点が乏しい環境が前提であり、また作業量と連動させた報酬により作業員もモチベーションが高まったことで、業績が目に見えて向上したのです。
テイラーはこれによって注目され、経営管理におけるマネジメントの父とも称される評価となります。経営者側は絶賛します。
その「科学的管理法」への高い評価に、疑問を投げかける研究も広がっていきます。その起点が1924年-1932年に実施された「ホーソン実験」です。
それまでの組織論は、すべて「公式組織」としての側面で捉えたものでした。1900年代ということもありますが、経営者目線、管理者目線でのアプローチです。
「ホーソン実験」から導き出された結論は、「公式」ではない、組織内での「非公式」なグループの感情が生産性を左右していた、という実態です。
背景には、経営サイドの興味関心が「管理」に偏っていくことで人間性への視点が低下していく流れがあったのです。チャップリンが「モダンタイムス」で強烈な皮肉を込めた批判を浴びせたのが、その象徴です。
現代は、もちろんテイラーの時代ではありませんが、「マネジメント（管理）」は否定される概念ではありません。ただ時代背景により、本来の目的から離れていったり、あるいは極端な解釈が幅を利かせたり… など、修正も求められます。この繰り返しが世の常であり、歴史の常道なのかもしれせん。
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