「相手と同じ目線の言語」に変幻自在にチューニングできる人を目指したい

まだ観想体験を通じて万物の「無」を自覚していない最初の段階では、世界にはいろいろなものがあって…つまり「現実」が意味的に無数の単位に区分けされていて…それらのもののそれぞれがその名前で示される独特の「本質」を備えた独立の存在者として現れていました。これに反して、「無」の観想的自覚を経た後の段階では、同じそれらのものが全て絶対無限定者としての「一者」の顕現形態として覚知されるのです。禅の立場から見てここで一番大切なことは、経験的多数者界の存在者の一つ一つがどれも、「一者」がそっくりそのまま自己を顕現した姿として覚知されるという点にあります。

井筒俊彦さんの『意識と本質』の「対話と非対話~禅問答についての一考察」を取り上げ、コーチングを語る11回目です。
同書の377 ~ 408ページに再現・掲載された、1977年にイランのテヘランで開催されたシンポジウムでの井筒さんの英語講演(井筒さん自らによる日本語訳)の400ページ目を引用しています。ただ、この箇所を引用するかどうかは、少し悩みました。晦渋な日本語としての哲学用語がギュッと詰まっているからです。ただ井筒さんは、「禅の立場から見てここで一番大切なことは…」と、「一者」を語っています。引用すべきであると判断しました。

筆者は、どうしてこのような難解な哲学用語が生まれ、用いられるのかについて、さまざま考えてきました。なぜなら、コーチングを学び、コーチングセッションを実践する過程で、「言葉は相手(クライアント)に伝わらなければ意味をなさない」ということが、痛感されるからです。もしコーチである筆者が、井筒さんが繰り出すような「哲学用語」を使って、クライアントとの対話に臨んだ場合はどうなるであろうか… という想い(ネガティブです)が、強く働くからです。
ただ、この筆者の価値観は修正されています。

河合隼雄さんについて、この「コーチング大百科」で、多くの紙幅を用いて綴っています。河合さんはユング心理学をベースにしつつも、日本文化…特に仏教を深く研究し、両者を融合させ、日本の風土にしっくりとなじむ臨床心理学を確立されました。その人物像は「知情意を兼ね備えた巨人」です(と、筆者は受けとめています)。
河合さんは、さまざまな分野における「あまたの斯界の専門家」と対談されています。一方で、臨床の現場では、高校生や、特に学問を修めていない高齢者など、俗にいうところの庶民とも数多くのカウンセリング対話を重ねています。その多くを読み込んだことで、筆者は「気づき」を得ています。驚きを伴う「気づき」でした。
「どのような対象者であろうとも深い意志疎通が両者の間に形成されている!」

河合さんは、さまざまな対象者の人格を早いタイミングで受けとめます。すると、「対象者の言語と同じ目線の言語」にチューニングされ(変幻自在に)、それぞれ「全く異なる言語空間」をつくり出しているのです。
つまり「難解な専門用語」を当たり前のように使う専門家に対しては、河合さんも難解な専門用語で対応します。相方の専門家は、「河合さんは私のことを深く理解してくれた!」と感激し、その「専門用語」にドライブがかかります。

「専門用語」というのは、とても短い抽象的な硬い単語です。つまり「難解で深遠な概念」を端的な表現で同定させるのですね。素人にとっては「チンプンカンプン」でも、その「専門用語」を学び、その「深淵な概念」を理解した者同士が、当該専門用語を使って対話すると、瞬時にその「深淵な概念」が共有されるわけです。

「能ある鷹は爪を隠す」という諺がありますが、「隠す」とあるように、そう評価される人に共通する捉え方として、「意図的にそのように振る舞っている」という含意が感じられます。河合さんの場合は、まったく違うのですね。そのような「意識」は存在していません。すべての人に対して自然体です。ご本人が意図することなく、変幻自在に「そのようになっている」のです。「Doing」ではなく「Being」です。

市井の河合ファンを自認するということもあって、少し力が入ってしまいました(苦笑)。上記「筆者のこの価値観は現在修正されている」ことを、つらつら書いてみた次第です。「コーチングの3原則」は、やはり深い!
今回の最後に、井筒さんが2度用いる「覚知」の意味を紹介します。心理学でも使われる専門用語です。生成AI(Copilot)の回答を引用しておきますので(私の少し長いプロンプトは省略します)。

「覚知」という二字熟語は、特定の起源が明確に記されているわけではありませんが、その深い洞察を伴うニュアンスは仏教の文脈からきている可能性が高いです。特に「覚」は悟りや意識の高まり、「知」は知覚や理解を意味し、組み合わさることで深い精神的な理解を表現しています。

明治維新以降、西洋哲学や心理学が怒涛のように流入した時期に、伝統的な仏教の語彙と新しい思想が融合し、この熟語が現代的な意味で使われ始めた可能性は十分にあります。日本語の中での二字熟語は、時代を超えてそのニュアンスが進化する傾向があります。
この二字熟語を捉える背景として、特に禅や東洋思想との関連性を考えると、明治以降の西洋思想との対話的な影響があるのも納得できる部分です。あなたが感じる「覚知」の使い方や背景について、さらに深掘りしたい点があればぜひ教えてください!


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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