隣の人は自分と同じとは思わない方がいいですよ
家裁で調停の仕事をしている知人から、こんな話を聞いたことがある。言いあって、言いあったはてに、万策尽きて、もはや歩み寄りの余地、「合意」の余地はないとあきらめきったそのときから、ようやっと「分かりあう」ということがはじま...
家裁で調停の仕事をしている知人から、こんな話を聞いたことがある。言いあって、言いあったはてに、万策尽きて、もはや歩み寄りの余地、「合意」の余地はないとあきらめきったそのときから、ようやっと「分かりあう」ということがはじま...
しかしもし「理解」ということが、他人と同じ気持ちになること、より具体的には他人と同じように感じたり、同じように考えたりすることだとしたら、そのようなことはひとりの人間にはおそらく不可能なことであろう。 『臨床とことば』の...
河合先生と向かいあったときの感触というのは、わたしにとって、ときにどでかい岩盤のようであり、ときにうぶ毛でできた森のようであり、ときにどろっとした緑の淵のようであった。わたしのわるい癖で、つい話をまとめようとする。すると...
ことばが途切れるそのときというのは、二様であった。あるときは、なにか獲物を見つけたような面持ちで会話からすっと遠ざかり、頭の中を高速回転させておられるような様子だった。未知のアイデアを、わたしなどにはとても追いつけないよ...
それがわかったのは、僕自身ときどき同じようなことをするからです。とくにインタビューをしているときには、集中して相手の言葉に耳を傾け、自分の意識の流れみたいなものを消してしまいます。そういう切り替えがうまくできないと、真剣...
『臨床とことば』を引用してのコーチング解説は、前回でその第1章~第3章を終えています。今回より、鷲田さんの一人語りである「第4章+文庫版あとがき」に移ります。 同書(単行本)は2003年2月に、「阪急コミュニケーション」...
文庫本で全253ページの『臨床とことば』を取り上げてのコーチング解説をスタートしたのは5月8日でした。今回が何回目なのか数えてみたところ、44回ほど解説を重ねています。同書は、第1章(~26ページ)が河合隼雄さん、最終章...
(鷲田)あっ、そうですか。(河合)そのお医者さんには、いくら言っても酒がやめられない患者がいるんだけど、先生は僕の言う通り、だまされたと思ってその患者と辛抱強く付き合ってみたんだそうだ。何度か検診を重ねるうちに、ある時点...
(河合)……そこで、似たような笑い話?を僕の方から一つ。僕は糖尿病の学会によく呼ばれるんですね。どうしてかというと、糖尿病の人というのは、お医者さんから「あなたは食生活をこう改善して、お酒をやめて、どのくらい運動して」と...
(鷲田)でも、これを私がジョークで言う間はいいんですけど、これをまた看護を勉強する人に「はい、おじいさんのときには上で昼寝しなさい」なんて言ったら、それこそ臨床の知がなくなりますので。 『臨床とことば』第3章の8番目の見...
(鷲田)……前回も「聴く」ということを、先生が話題にしてくださったんですが、そのときに、聴くというのは言葉を受けとめるということで、とても大事なことだと思うけれども、大事なことは、話の内容も大事だが、要するに内容を肯定し...
(鷲田)ケアの現場なんかでも、生野学園と同じで、ひょっとしたら食べ物というのが、ものすごくケアの現場なんかのベースにあるのかもしれませんね。(河合)だから、生野学園は「あてがいぶち」じゃないんです。いろいろあって、生徒が...
(河合)父上様、母上様に続いて「姉上様 何何は美味しうございました」と、食べ物がずっと続くんですよ。僕はそれをもじって、比叡山会議の翌日あるところでしゃべったんです。「皆さん、こういう遺書があるんです。今の子が死ぬときど...
(鷲田)……それについてはエドマンド・リーチという文化人類学者がめちゃくちゃ面白いことを言っているんです。これには私、感動しました。食のタブーと性のタブーと、侮蔑語の使用というのが、ほとんどの文化で対応関係にあるそうなん...
(鷲田)これは、性の達人になる道にも近いですね。(河合)本当ですね。だから、セックスというのは象徴的にものすごく意味が深いんですね。だから、皆、性のことにも関心があるし、文学の対象にもなるし、いろんな話の中でセックスがい...