これは話している場合と同じことだと僕は思うんです…
(河合)…… ここに大きい木があって教会がある。そこに女の人がいて、その後ろにいろんなものがごちゃごちゃ入っているんです。これを、治療室の棚から取ってきては、ぐちゃぐちゃっと入れる。それを次から次から、かなり長い時間、こ...
(河合)…… ここに大きい木があって教会がある。そこに女の人がいて、その後ろにいろんなものがごちゃごちゃ入っているんです。これを、治療室の棚から取ってきては、ぐちゃぐちゃっと入れる。それを次から次から、かなり長い時間、こ...
(中沢)今日は河合先生から箱庭療法についての講義を受けようと思います。(河合)ごく簡単に箱庭療法の説明をします。私は1962~65年の間、スイスのチューリッヒにあるユング研究所に留学しました。この間に、箱庭療法をすすめて...
(河合)法華経のことをちょっと聞きたい。僕はね、法華経のことを何も知らないんだけれども、要するに、賢治のお父さんは、あれは真宗だったのかな。(中沢)ええ、真宗ですね。(河合)だから、仏教は、もともとは科学も宗教も、哲学、...
(中沢)…… それからプルーストの『失われた時を求めて』(ちくま文庫)も。その時に、複雑系としての文学が完成系に行って、大江健三郎がその延長上で、自分は文学者として複雑系を追求しているというのを意識している数少ない文学者...
(河合)…… ここでもうひとつ対立的にものを見る見方で、日常語と詩的言語というのがあります。日常語はコップはコップと見てるんだけど、詩的言語ではまったく違う見方、これを異化していく見方。そうすると、宗教と科学と、今度は詩...
(河合)僕はもうひとつね、きょう、中沢さんと話したいと思ったのは、僕は宗教と科学の問題について関心があって、科学は、言ってみればわれわれ通常の意識を非常に分割して、切断して、分けていっているんです。普通だったら単に水と言...
(中沢)観音様が観音様になる前は常泣菩薩って言われてました。いつも泣いてる菩薩さんです。いつも泣いている菩薩がいて、なぜ泣いているのかというと、世界を見ると、生き物を見ても悲しくて悲しくてしようがない。どんなちいちゃい生...
(河合)西田幾多郎は哲学だし、山田耕作は歌で、あれも相当早くからみんなに好かれるわけでしょう。ところが、宮沢賢治の入り込んだ意識の層が、もうひとつ深い、死のすれすれというところまで。死のすれすれまで行っているから、こんな...
(中沢)……賢治の『農民芸術概論』は、大地を科学力によって合理的に変えていくけれども、それは大地を収奪・破壊したりすることじゃないんだ。農業というのは、母性の大地を相手にしながら、それにお父さんの科学の力を注ぎ込むことに...
(中沢)先ほど河合先生がおっしゃった、母性の空間の中に父性が科学という形でしっかり侵入しているのが賢治なんだというご指摘は『農民芸術概論』なんかを見るとよく出ているなと思います。『農民芸術概論』の中で、科学で、たとえば天...
(河合)カムパネルラは、僕は、男でもあるし女でもあると思ってたんです。ふつうわれわれが言うお母さんとかお父さんとか、恋人とかから、全部離れています。だからすごい世界を書けたと思いますね。(中沢)あの空間全体は、やっぱり観...
(河合)…… 僕は、『銀河鉄道の夜』を読んで面白いのは、はじめ、母と息子の物語として出発するんですね。だから、ある意味では、ずっと母性が底流にあるんです。あるんだけれども、チェロのような声をした男の声が聞こえてくるって。...
(河合)やっぱり自然科学というのは、単純な分類をすると、父性でしょう。父親的な切る力がなかったらできないですからね。母親からも自立できるし、自分は物事をすっきりわかっているんだという、賢治という人は、日本人には珍しく、父...
(中沢)恐るべき生命力。あれを論理の中に必死に抑え込んでいって、しかも、一貫してますね。いつも矛盾したものを同一物として見ていく。それを外側から包摂していく自覚の視点を持っていた。それが西田の場合は、善だとか仏教だとか言...
(中沢)『土神ときつね(狐の漢字を充てている版もあります)』を見ても、この土神の嫉妬の激しさは、これはやっぱり自分の中にそういうものを抱えている人でないと、ここまでの表現はできない。自分の頭の上で跳びはねている狐に対して...