「自我」については、これまでも多く取り上げてきました。今回は、ユングが「自我とコンプレックス」のかかわりを、どのように把握しているのか、『<心理療法コレクションⅠ>ユング心理学入門』で、河合隼雄さんが解説しているところを紹介します。
人間が生まれてから成長するに応じて、その意識体系も複雑になるが、それが一貫した統合性をもっていることは大切なことである。この統合性をもつゆえに、われわれは一個の人格として認められ、また、いわゆる個性というものも感じられるのである。ユングは、この意識体系の中心的機能として自我(ego)を考えた。この自我の働きにより、われわれは外界を認識し、それを判断し、対処する方法を見出していく。これによって、われわれはその場面場面に応じた適切な行動をとっていくのである。ところが、この整合性をもつ自我の働きを乱すものがある。それがコンプレックスである。(42ページ)
コンプレックスについては、フロイト、アドラー、そして今回紹介するユングなど、多くの心理学者が、そのメカニズムについて、腑に落ちる解明を目指し、理論化を試みています。河合さんも、彼らの視点を援用し紐解いていきます。
フロイトはその著『日常生活における精神病理』に、多くの例をあげて説明している。コンプレックスは自我の統制外にあるので、それによって起こった障害は、「まったく思いがけない」ものと感じられ、あるいは「何かに取りつかれた」としか考えられないような性質のものが多い。コンプレックスは、実際おとぎばなしに出てくる小人たちのように、われわれの知らぬ間にいたずらをして、大失敗をさせては喜んでいるように思われる。(43ページ)
コンプレックスは「自我によって受け入れがたかった経験が抑圧され、それが心的外傷(トラウマ)という共通な感情が形成されることで生じる」、と説明したのはフロイトです。河合さんはフロイトとユングが、「コンプレックス研究」を接点として出会ったことを次のように語ります。
ユングが連想実験を通じてコンプレックスの存在を考えていた頃、一方フロイトも夢分析や催眠現象などを通じて同様のことを考えていたわけで、これを知り喜んだユングは、1907年フロイトと会い、両者の協調が始まる…(45ページ)
さて、フロイトが「私の皇太子」とほめたたえたユングとの関係は、「無意識の相違」が鮮明になっていくことで、最終的に両者は決別してしまいます。そこには、フロイトのコンプレックスに対する断定的な見方を覆そうとしたユングの人間観が見出せるのです。
この中核をなすものは、ユングによると、前述したような、自我にとって受け入れがたかったため抑圧された経験と、その個人の無意識のなかに内在していて、いまだかつて意識化されたことのない内容との二種類に分けられる。あるいは、このようにはっきり分けて考えないにしても、コンプレックスと言う場合、つねに抑圧された心的外傷を探し求めようとしたり、抑圧されたという点から、つねに否定的な感じのみをもつことがないように強調したいのがユングの狙いであるとみるべきだろう。(中略)
すなわち、フロイトにとって無意識の心的内容は抑圧されたもの、そして性的な欲望との関連の深いものと考えられたのに対して、ユングは、フロイトの説明を認めながらも、無意識の内容はそれのみでなく、建設的・肯定的なものも存在することを強調しようとしたのである。(44ページ)
ユングのコンプレックスの視点は、コーチングの人間観に通じるものであることを、河合さんの紐解き解説は語っているのです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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