河合隼雄さんの『大人の友情』の7話目は、「友人間の距離」です。
このエッセイは、河合さんの思いが強く出ている印象です。他の「話」と比べてページ数も多く、1992年刊の『こころの処方箋』で登場した「青山二郎」のことが、より詳細に描写されており、いかに青山二郎に影響を受けていたのか(晩年に至るまで)が、彷彿とされる内容です。まずは、中間あたりで語られるところを引用してみます。
たとえば、白洲正子『いまなぜ青山二郎なのか』(新潮社)のなかには、青山二郎をめぐって、小林秀雄、大岡昇平などの互いの「友情」が描かれているが、それは何とも凄まじいものである。彼らの激しい感情が共鳴したり、衝突したりする。そして、破局を迎えたりもする。
たとえば、仲間の集まりのなかで、青山二郎は小林秀雄にからんでゆく。「オイ、小林、お前の文章はダメだぞ。いつもこういう席で喋ってることとは違う。お前は酒を飲むといきり立って、たとえばゴッホを見た喜びを語るだろ。その方が書くものよりずっと面白い。生きてるんだ。文章になるとそうは行かん」、こんな調子で続く青山の言葉にはじめのうちは小林秀雄は「おとなしく受け答えしているが、いつもの勢いのよさはない。それというのも、あまりにもほんとうのことだから、返す言葉もなく、小林さんは黙ってしまう」「私は何度も小林さんが涙をこぼすのを見ている。青山さんだけが、小林さんを泣かすことができたのだ」。
小林秀雄の偉大さを知っている昭和世代の筆者は、「その人物を泣かすことができたのは青山二郎だけだ」、というこのフレーズにいたく感動しています。もっとも、昭和を知らない世代にとっては、「小林秀雄」といってもピンとこないと思うので、チャットGPTに、「日本の近現代における批評家・評論家の第一人者は?」と質問してみました。昭和については、前後期に分けて、回答が返ってきました。
昭和前期:島崎藤村、田山花袋、武者小路実篤、中村光夫、小林秀雄、保田與重郎、坂口安吾など
昭和後期:三島由紀夫、大江健三郎、吉本隆明、江藤淳、蓮實重彦、柄谷行人、村上春樹など
小林秀雄が出てくるのは想定内でしたが、昭和後期の最後に、「職業としての小説家」と自認する村上春樹氏が登場したのは、少し意外でした。質問は「批評家・評論家の第一人者は?」であり、春樹氏のことをチャットGPTは、小説家というカテゴリーを溶かす人物であると認識したようです。
さて、このエッセイを読み終えた時、CBLコーチング情報局で以前解説した、「共感的理解」の内容を想起しました。次のパラグラフです。
「共感」とは「共に感じる」ということであり、価値観の異なる人同士が、その感覚を純粋に得ることは容易ではありません。そもそも人はそれぞれ別の個体であり、相手は自分ではありません。つまり自分ではないので、考え方、感受性は異なります。したがって「私はあなたと同じ感覚です」とは、言えないのが自明です。
言い換えると、「私はあなたの気持ちがわかる」と言い切ることに慎重になる心持ちが、共感的理解につながっていくのです。
このことが濃厚に感じられる河合さんの言葉を引用し、今回の解説を終えることにしましょう。
これによく似た例で、一心同体のようになりながら、その友人に何か依頼されたとき、何とも思わずに、あっさり断ってしまって、友人関係が潰れるというのもある。自分でもわけがわからないのに、冷たくなるのだ。
これは、人間は「一心同体的」にはなれるが、残念ながらいつも「一心同体」にはなれない、という事実によるものである。あるいは一時的には、なれても、いつもそうだということはない、と言ってもいいだろう。人間はやはり、一人一人個別なのである。
とは言っても、異なるはずの人間が「一心同体的」経験をするのは、やはり有難いことだ。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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