
(中沢)
…… 彼は『大地と休息の夢想』(草思社)を書いて、夢というものをもう一度大地とつなげるものにしようとしますね。ガストン・バシュラールが書いていることで僕がいちばん印象に残っているのは、これは夢の問題とも絡んでいることなんですが、バシュラールはパイをこねている時が、自分の想像力や夢想の根源だと言っていることなんです。パイをペタペタこねる動作というのは、陶器づくり、土器づくりとよく似ていますね。土器というのも粘土をこねてペタペタやるわけで、土に帰属した技なんですね。
今回から、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談である『ブッダの夢』、第6章「汎神論風夢理論のこね方」の7番目の見出し「パイをこねるような夢の作業」を取り上げます。引用は、この見出しのタイトルにつながる中沢さんの語りです。それにしても、中沢さんの知識の引き出しは凄いですね。バシュラールも登場します。
筆者は陶芸に疎いのですが、中沢さんの言語化によって、縄文・弥生時代の土器や、古墳時代に埴輪がつくられた文化の意味合い・神秘性が少しわかったような気がしています。もちろん「陶磁器」は、茶碗や花器といった合理的な用途をもつ「製品」でもあります。ただ不思議なもので、過去から現在に至るまで「使用価値」とは別の名状しがたい「付加価値」をもつ「芸術作品」にもなりうることを、私たちは共有しています。命の母体、「土」がもつ力なのでしょう。
一つ前の見出しは「ユダヤ的知性は霊性を羨望する」です。定住地をもつことが叶わなかったユダヤ民族は「土」から切り離されてしまった。それが、「大地と直結している霊性」への劣等感につながり(無意識?)、対極である「知性」を磨く方向にエネルギーが投入されていった、という主旨が語られます。
切り離されてしまったら、もうどうしようもないのか…? 見出し最後の、河合さんの強い言葉が印象的です。
(河合)
ですから本当に切れたやつを土地につなぐものとしての夢でしょ。
(中沢)
そうだと思います。
(河合)
切れてしまったものをもう一回土につなごうと思ったら、そのあいだのメッセージというのは、もう夢しかない……。
河合さんは、日本における「夢分析」の第一人者です。そのことが伝わってくる解説を「ユングが語り、河合隼雄さんが紐解く『夢』とは?」というタイトルを付し解説しています。リンクを張っておきますので。
冒頭の引用の続きです。
いま河合先生が言われたように、ほうっておくとどこまでも抽象に、科学に行ってしまうようなものを、もう一回大地につなぐ夢ということを考えた人が、パイとか土器づくりのことを考えていたというのは面白いと思うんです。
(河合)
パイづくりと夢の作業というのは似ているわけですよね。結局、こねているわけですから。ちゃんとした土器はなかなか出てこないんだけど、ときどき破片が出てくるので、そこからいろいろ考えてやっているわけですよ。
「夢の欠片」という表現を私たちは普通に使います。河合さんそれをもう少しひねって「土器の破片」につなげました。素敵なメタファーです。
河合さんは、スイスのユング研究所に留学するまでは、「夢」に対して特に関心はなかったようです。西洋科学を信奉していた河合さんは、京都大学理学部数学科で学んでいます。キャリアのスタートは高校の数学教師です。「仏教」についても興味はなく、むしろ「嫌いだった」とのこと。ですから、「科学(知性)第一主義」のユダヤ人のようですね(笑)。
河合さんが著された多くの著作に目を通している筆者は、河合さんの人生を象徴する「二文字」を確信として同定させています。「変化」です。
「人は変わることができる」というのが、コーチングの「核心」です。次回は「夢理論」を語る河合さんを紹介しようと思います。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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