「何事も加減が大事」は、本当に大切なこと

が、ただひとつ、そのためには、そのひとがそれまでの人生を何を軸として自分が納得できるようにまとめてきたかを考える必要がありそうだということ。そのことだけは予感としてある。「物語」という視点がいろいろに問題を含みながらも、どうしても捨てられない理由のひとつはそこにあるような気がする。

前回より『臨床とことば』第4章6番目の見出し、「語りのゆくえ」を取り上げ、コーチングの解説を始めています。その中にある、「ひとは、じぶんが浸りきっている存在の世界がじつは世界ではないということに、どこで気づくのだろうか?」とつぶやく鷲田さんの言葉に共感を覚えたことで、この「哲学」が共有する一つのテーマについて、少し紙幅をとってみました。
ただ、「CBLコーチング情報局」は、コーチングを実践的に紹介することですから、「哲学学」に深入りしないよう心して臨みます(笑)。
冒頭は、鷲田さんが自らつぶやいたこの疑問に対して、「この謎をいまだに解けないでいる」と認めた上で、その後に続けられる言葉です。

人は自分にとって納得できる(都合のよい)「人生の物語」をつくってきた。それが捨てられないがために「自分が浸りきっている存在の世界に逃げ込んでしまう」、と鷲田さんは言っているのでしょう。鷲田さんは、出口泰靖氏の論考である「かれらを『痴呆性老人』と呼ぶ前に」(「現代思想)2002年六月号)を引用し、この「物語」を見つめ、「痴呆性老人」と呼ばれる人の心の内を紹介します。

物忘れがあっても気にならない社会があるといいなあ。とかく物忘れがあると恥ずかしい気持ちになり、適当に話を聞いて分かったふりをする。でも、後から話が合わなくなってしまうことがある。そんなときには悔しいことだが、仕方ないとあきらめる。そうすると、気が楽になる。(中略)
物忘れしたらまた人に聞けばいい。みんながしっかりしてくれと励ましてくれる。だけど、どんなに励まされてもできないことはできない。そんなことを理解してもらいたい。

鷲田さんはこの後、村上龍の『ラブ&ポップ』を引用します。

きのうは「心がグシャグシャ」だったのに、翌日には完全に平穏になって、シャンプーできれいに洗い流したみたいに、心がツルンとして、『何かが、済んだ』ような気持が不思議で、イヤだった。

この「女子高生のため息」と「痴呆性老人の訴え」は「ほとんど重なって聞こえる」、と鷲田さんは言葉にします。

あのときもいまもそして明日もじぶんが「同じじぶん」であると言える根拠はどこにあるかと呆然とする。アイデンティティ(同一性)とそっけなく言われる事態が、どうしてこうも脆いものとして感受されざるをえないのか、それをどこか共有しているわたしとは何か、そしてそのわたしがその繊維に編まれるようにして現在に存在しているこの時代とは何か。そんな問いにふと襲われる……。

哲学者の鷲田さんの思念は、どこまでも深く沈潜していくようです。言葉を尽くそうとする哲学者の言葉は、ときに「晦渋さ」が顔を覗かせます。
人格としての理想の姿は「自我が統一」されていることです。ただし、「理想」であるこの言葉に囚われてしまうと、それは「自己理想(理想的自己)」に転化してしまい、逆に「自我の統一」から遠ざかってしまいそうです。
鷲田さんの想いは、きっとそこにあるのだと、筆者は受けとめました。

最後に、河合隼雄さんが捉える「自我」を紹介しておきましょう。河合さんは「私という人間がひとつのまとまりをもって動いているその中心・主体」と、「自我」を定義(“一応”という言葉を付して)しています。その上で河合さんは、少し安心できるコメントを私たちに届けてくれました。

非常に大切なことは主体性、同一性、他者との区別、統合性ということすべて「ある程度の」がつくことです。絶対的なものではありません。

「何事も加減が大事」は、生活の知恵として世の中に膾炙しています。とても素敵な言葉であると、筆者は受けとめています。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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