前回の解説では、「神話」を取り上げました。河合隼雄さんは『＜心理療法コレクションⅠ＞ユング心理学入門』のなかで、世界の神話を取り上げ、それがユングのいう「普遍的無意識」によって、形成されているという考えを、私たちに提示します。
「風という現象を高気圧や低気圧、空気などの移動なとによって説明されるよりは…」と前フリをして、河合さんは「ローレライ」の話につなげます。
その歌声によって舟人をひきつけ、深淵にさそい込む、ローレライの美女のお話は、われわれに、ローレライの不可知な美しさと、その裏にひそむ抗しがたい危険さを、生き生きと感じさせるのである。そして、それゆえにこそ、これらの話は、われわれの知的な判断によれば、無意味であることが明らかであるのに、今なお、生命を保っているのである。そして、このような凄まじい嵐の神の男性像、美しさと恐ろしさを兼ね備えた不可知の女性像は、われわれが世界中の神話やおとぎ話を読めば、あらゆるところに見出すことができるのである。（84ページ）
河合さんはユング派心理学者ですから、ユングが打ち立てたさまざまな業績を、独自の視点も盛り込みながら、多面的に記述します。CBLコーチング情報局でもその業績を取り上げてきました。その一つが「元型」です。この「元型」は、「普遍的無意識」を説明するためにユングが到達した「根本概念」といえるほど、重視されています。だからこそ、ここでも河合さんは「元型」を語ります。
神話との関係において、ユングの元型を述べてきたが、もう少し説明をつけ加えたい。ユングの元型の考え方が、よく誤解される点は、それを人間が古代に獲得したイメージが遺伝されたものと受け取られることである。もちろん、人間が生後に獲得したものが簡単に遺伝されるとは考えられず、ユングも、このように考えていない。元型とはむしろ、人間が生来もっている「行動様式」（pattern of behavior）というべきである。（84ページ）
前回のキーワード解説で、東アフリカのエルゴン山中の住民の話を取り上げました。
昇る太陽を見たときに、それをそのまま太陽としてみるよりは、「神」として把握しようとする様式が人間の心の内部に存在していると考え、そのような把握の可能性として元型を考えるのである。（85ページ）
日本の神話でも「太陽神」が語られます。「天照大神」です。不思議ですね。河合さんが言うように、つながっています。どうして「つながっているのか？」について、多くの人は「科学的で合理的な説明を求めます。現代において、その解答に、もっとも“近づいている”のが「ユングの元型」であることを世界が認めているのですね。ただし、“近づいて“いますが、それでも現代の科学では証明不可能といってよいでしょう。
河合さんは次のように語ります。
元型は、その姿を隠喩（metaphor）によってのみ、われわれに示すものといってよいだろう。そして、このような隠喩をよみとることのできぬひとにとっては、元型は合理的な理解を超えた深い謎としか感じられぬことであろう。（85ページ）
この河合さんの最後の言葉を受けとめます。今回のキーワード解説は、次の言葉で締めくくることにしましょう。
コーチングは、「人とは〇〇〇である」という「断定」をもって人を把握することではありません。人のことはなかなかわからない、合理的な理解にこだわるのではなく、その人が内部に秘める可能性に着目し、そのことを信じ、伴走していく存在こそが、コーチングのプロコーチなのです。「元型」は、その思いに近づくことができる大きなヒントを私たちに提供してくれるのです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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